靴紐直して走る

八月某日 床に寝そべって
眼を閉じている
建築現場の足場をバラす音が聞こえて来る
歌うような掛け声

定刻通りに時報が響く
空の上から
あれからどうして此所まで来たか
これから何処へゆくか
真夏の午後が燃えている

いつだって あの時だって そうだっただろ?
今だって これからだって そうするだけさ
靴紐直して走るだけさ

遠雷 夕立 歪んだ足取り

『今なんて言ったんだ? 聞こえないぜ。』
踏切に快速がグラグラと通る時
「ダメだ」って言ったんだろ?
本当は聞こえてたんだ
知らん顔したままで遮断機は上がる

いつだって あの時だって そうだっただろ?
今だって これからだって そうするだけさ
誰だって 何処にいたって 夜が明けたら
靴紐直して走るだけさ
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