沈黙

目をそっと閉じれば 浮かんで来る
やさしいあなたの笑顔
こんなに愛しいのに
手に届かない
その距離が切なくて…

グラスの中のソーダ水をほら
かき混ぜて
小さな泡を逃がすように
この胸の片隅に溶け込んだ
思い出のひとつひとつを逃がしたい

時間の砂がさらさら落ちて
日が暮れて人影少ないこの場所
あの頃によく来た
公園のカフェテラス
ただそばにいるだけでしあわせで…
あなたがいない その現実に
戸惑った自分がガラスに映る
もう誰かのことをここまでは愛せない
心は俯いたまま
沈黙

ドアが開く度に顔を上げる
あなた やって来るようで…
「遅くなってごめん」と
頬にキスして
マフラーを取りながら…

コーヒーを飲むあなたの表情
見てるのが
話すことより楽しかった
夢にまで出るような切なさに
言葉など無力なものと知っていた

時間の砂がさらさら落ちて
いくつかの季節が巡った2人は
十字路のどこかで
運命にはぐれて
それぞれが別の道 歩いてる
あなたがいない 私は1人
そう今もそのことに慣れていない
淋しい夕暮れは窓辺の指定席
電話もためらったまま
沈黙

時間は何を教えるのでしょう?
いつの日かきっと忘れるということ?
悲しみのすべてが
色褪せる日が来る
そう楽観的ななぐさめに
あなたがいない あれからずっと
どんどん思い出してしまうよ
永遠の長さを持て余したように
コーヒー オーダーして
沈黙
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