湯の町哀歌

いで湯銀座の 銀の字が
ひと文字欠けた 灯(ひ)がともる
人のうわさの 細糸を
たぐり寄せれば その先の
きみは湯けむり かくれ花

酒にやつれた 横顔の
白さにつのる いとおしさ
今も住むのか この町に
寝ものがたりの つれづれに
夢が欲しいと 泣いた女(ひと)

橋のたもとで 名を呼べば
山鳥啼(な)いて 闇にとぶ
逢えば別れが 辛いから
ひとり帰ろう 濡れながら
きみの面影 背に捨てて
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