湯島の白梅(歌謡浪曲入り)

湯島通れば 思い出す
お蔦主税(つたちから)の 心意気
知るや白梅 玉垣(たまがき)に
のこる二人の 影法師(かげほうし)

(セリフ)
「えッ 別れろって…
早瀬さん、別れろ切れろは、
芸者のときにいうものよ、
私(あたし)にゃ死ねと云(い)って下さいな、
蔦には蔦には枯れろと、
おっしゃいましな…」

(歌謡浪曲)
「すべて いうのじゃ ありません
未練でいうのじゃ ありません
いとしい夫の ためならば
死ぬよりつらいことだとて
女房が聞かれぬ わけはない
それを聞かなきゃ 早瀬さん
婦(おんな)の系図(けいず)に 傷がつく」

(セリフ)
「お蔦、すまん許してくれ
せめて最後に好きな我がままを
云ってくれ」

「はい、じゃ、手を引いて」

青い瓦斯燈(ガスとう) 境内(けいだい)を
出れば本郷 切通(きりどお)し
あかぬ別れの 中空に
鐘は墨絵(すみえ)の 上野山
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