recollection

「どこにでもあるような幸せな家族。
国中に漂う不自然なまでの魔女への信仰にも、
どうにか順応して……」

貧しいことなんて 笑い飛ばせる眩しい家族(famile)
小さな家 桜草(primevere)の咲く 暖かな小庭(jardin)

咲く花のように 綺麗な顔した
フランとレスター 両親の自慢だった双子

人見知りのフランチェスカ レスターの背を離れずに

「お兄ちゃんなしでは、村の外にも出られないんじゃない?」
からかわれて頬膨らませた 優しい春の日

「御機嫌よう、みなさん。
幸せな日々をお過ごしのところごめんなさい。
じゃ……終わりにしましょう?」

「全てが引き裂かれたのは突然のこと。
たった一人で現れた魔女は彼らの言葉を待つこともなく、
愉しむように両親を殺し、そのまま双子を連れ去ろうとして……。
眼前の凶事を受け入れることのできない少女は、
ただ虚ろに叫び続けていた」

「嘘……いや……いやぁぁぁぁっっ!!」

眼下に広がる血と血の逢瀬は 思慕の跡を
命絶たれても尚 描き輝く
稚拙な御伽噺だと信じた “絆狩り”は
突如前触れなく光を壊した

何の音も聞こえない 自分の声も
彼女は全てを拒絶するように叫び続け――――

遥か蒼穹の空へと撃ち鳴らすのは
虚構求め 揺れる心の警鐘か……?

「ねぇ、煩い。お前はもういいや……」

「囁く魔女は、叫ぶフランチェスカに刃を向ける。
けれど刺し貫かれるその刹那、
レスターがその凶刃を己の身を呈して受け止めて……」

「妹だけは、こいつだけは助けてやってください。殺すのなら俺に……」

いつだって後ろにいて
いつだって守られて――――

自分も怖いくせに 小さく震えてるのに
どうしてなの?いつもみたいに
瞳を細めて 安心させるみたいに
笑って背に庇い続けてくれたのは――――

「フランチェスカは、
兄の手から流れ出る血に再び深い衝撃を受け、声を失ってしまう。
まるで、この瞬間の悲鳴で一生分の声を発し尽くしてしまったかのように。
その光景を嬉しそうにみていた魔女は、
兄であるレスターだけをその場から連れ去って……。
少女の傍に残されたものは、
寄り添いあって倒れ伏す両親の死体と、血の香りだけ」
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