妻恋峠

もろいはずでは なかったが
今の別れにゃ つい負けた
やぼと知りつつ あとふり向けば
空(から)の荷ぐらにゃ 月ばかり
小諸出て見ろ 浅間の山に
きょうも三筋の けむり立つ

なじょな心で 行ったやら
思や顔さえ 丸写し
死んでいなけりゃ あの年ごろか
ほんに情けぬ 恋女房(こいにょうぼう)
五里も三里も 山坂越えてヨ
逢いに来たのに 帰さりょか

ほれたつもりじゃ さらにない
泣けてよろける 道八丁
み山暮らしに みやげはないが
持って行かんせ 馬子(まご)の唄(うた)
浅間山さん なぜ焼けしゃんす
すそにお十六 持ちながら
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