思い出の街

地下鉄の駅から五分 学生時代の街へ来て
なつかしい店を探す 古本屋キリン堂
きみとはじめて 出会った店
いまも そのまま あるだろか
透明な日ざしをあびて 思い出の街を歩く
青春の匂いは遠く 行きかうは見知らぬ人びと

本棚のチェーホフ全集 ほとんど読まないままに
情けない値段で売った 古本屋キリン堂
きみを誘って 海を見に行く
あれは 五月の晩だった
透明な日ざしをあびて 思い出の街を歩く
青春の匂いは遠く 行きかうは見知らぬ人びと

傷ついて きみとも別れ 一本のビールに酔って
看板を足で蹴った 古本屋キリン堂
あれから五年 季節(とき)はながれて
いまは 知らない店ばかり
透明な日ざしをあびて 思い出の街を歩く
青春の匂いは遠く 行きかうは見知らぬ人びと

青春の匂いは遠く 行きかうは見知らぬ人びと
青春の匂いは遠く 行きかうは見知らぬ人びと
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