鷹の歌

あなたは杖(つえ)をついて ゆっくりと歩いて来た
見てはいけないようで 私の視線はたじろいだ
あなたはとても遅く 身体(からだ)を運んでいた
まわりの人はみんな いたわりの手を差しのべた
鷹と呼ばれていた人が
這(は)うように命を運ぶ
「見なさい」 あなたの目が
「見なさい」 私を見た
「怖(おそ)れるなかれ 生きることを」
鷹の目が 見つめて来た

世界は変わってゆく あなたはいつもそれの
変えてはならないことを つよく叫び続けて来た
世界は変わってゆく あなたを嘲笑(わら)いながら
私はあなたの歌を 痛々しく聴き返す
灰色の翼は痩(や)せて
かすれた鳴き声をあげて
「見なさい」 あなたの目が
「見なさい」 私を見た
「命を超えて続くものを」
鷹の目が 叫んでいた

あなたは停(と)まりもせず そのまま歩いてゆく
面倒(めんどう)な道ばかりを あえて歩き続けてゆく
私は自分を恥(は)じる あなたを思って恥(は)じる
ラクな道へ流れくだる 自分の安さを恥(は)じる
鷹と呼ばれていた人が
這(は)うように命を運ぶ
「見なさい」 あなたの目が
「見なさい」 私を見た
「怖(おそ)れるなかれ 生きることを」
鷹の目が 見つめて来た

「見なさい」 あなたの目が
「見なさい」 私を見た
「怖(おそ)れるなかれ 生きることを」
鷹の目が 見つめて来た
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