泪と侍

泣くといわぬに 泪(なみだ)の奴(やつ)め
武士の面(おもて)を 濡(ぬ)らすとは
言語道断 無礼であろう
ながのいとまじゃ エー 下がりおれ

泣けというのか 大小差して
いいや泣かぬぞ 泣きはせぬ
ならぬ堪忍 こらえてすてる
恋に泣いたら エー 名がすたる

泣きはせぬぞと 申しておるのに
たわけ泪め 下がらぬか
不埒千万(ふらちせんばん) 人目もあろう
せめて闇世に エー 出てまいれ
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