ジーザス小父さん

飢えた狼みたいな 瞳(め)をしていたか知れない
無垢なからだが 仕方なしに女に変わる頃…
家庭(いえ)がどうとか 同情だとか
噛みつきたいほど うざったくて
ホームレスのジーザス小父さん
あなたに会えてよかった
「生きてりゃいいさ 人間捨てたもんじゃないさ」と
強(きつ)いタバコをくれたね
通る人は 空きボトルでも蹴るように
蔑(さげす)みながら過ぎたけれど
段ボールにふたり寝転んで 見上げた星空
ジーザス ジーザス あの蒼(あお)さ 忘れない

誰もおとなが不潔に 思える年令(とし)があるよね
たまに顔出す 父の媚(こび)が死ぬほど嫌(いや)だった…
愛もないのに 別れもしない
都合のいい母 軽蔑した…
髪の長いジーザス小父さん
あなたにそして救われ
この世の居場所 到頭、探し当ててみたのに
どこへ風来(ふら)りと消えたの…
時代(とき)は流れ あの公園はスーパーに
私もどじに親になって
もう二度とは遭(あ)えはしなくても ぐれずに来たこと
ジーザス ジーザス 「でかした」と言われたい

ホームレスのジーザス小父さん 娘とチャリを漕ぐたび
「生きてりゃいいね 私は捨てたもんじゃないね」と
遠いあなたに訊(たず)ねる
ジーザス ジーザス 人生をありがとう…
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