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第91回 レキシ「きらきら武士 feat. Deyonna」
 二千二十年の一回目は、新年にピッタリのレキシを取り上げるでござる。なぜレキシは新年にピッタリかと申すと、年末年始の様々な行事は、伝統に則ったものが多く、ふと我々は、祖先に思いを馳せるからでござる。でも、そもそも今は、年間を通じて歴史ブームでござるなぁ。若い女性が戦国武将を身近に感じ、それぞれの“推し”にまつわるグッズを身につけたりもしておるし、もしやそれは、今回の主役、レキシがブームの先駆けだったと申しても、おのおの方からさしたる謀叛も起こらぬであろう。

怪しくなってきたので、ここからは普通に書きます(笑)。ご存じない方のために、改めて紹介すると、レキシは才能あふれるキーボード奏者であり、音楽プロデューサーであり、俳優としても活躍し、アフロヘアーがお似合いの、池田貴史の音楽プロジェクトである。その際、ステージや歌詞の世界観などにおいて、日本の歴史からお題拝借するのが、このプロジェクトのコンセプトとなっている。

“歴史”は“レキシ”となり極上のファンク・ミュージックになった

 彼はSUPER BUTTER DOGという、多くの音楽好きから支持されたバンドに在籍していた。当時のイメージ的には邦というより洋だった。しかし、そもそも歴史に造詣の深い人物であり、そんな個人のスキルを全面に押し出すことで、レキシは2007年にスタートしている。なお、“歴史”は普通“レキシ”と片仮名表記はしないものだが、そうすることで、何やら和洋折衷な雰囲気が醸しだされる。それ即ち、彼がやっている音楽そのものでもある。

こんなコンセプトのヒトは居なかったし、大いに目立った(しいて挙げるなら、1990年に、森高千里が発表した『古今東西』というアルバムが、時代劇をコンセプトにポップを展開していた)。キワモノっぽく受け取られる危険性も充分あったが、たとえ第一遭遇がそうであっても、やがてもっと深いところで理解してくれるだろうという自信が、彼にはあったのだろう。
ジャケット画像です。
「きらきら武士 feat. Deyonna」
2011年3月16日発売
cutting edge
歌詞を見る。
レキシ
池田貴史によるソロユニット。福井県出身。1997年SUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてメジャーデビュー。2004年より中村一義らと共にバンド100sのキーボーディストとして活動。日本の歴史に造詣が深く、ソロ・プロジェクト、レキシとして2007年アルバム『レキシ』でソロデビュー。ファンキーなサウンドに乗せて歌う日本史の歌詞と、ユーモア溢れるステージングで話題を呼ぶ。現在までに、『レキツ』『レキミ』『レシキ』『Vキシ』『ムキシ』と6枚のアルバムをリリース。アルバムにはこれまで、いとうせいこう、椎名林檎、斉藤和義、松たか子、持田香織(Every Little Thing)、秦 基博、後藤正文(from ASIAN KUNG-FU GENERATION)、山口隆(サンボマスター)、Bose、ANI(スチャダラパー)、安藤裕子、Mummy-D(Rhymester)、キュウソネコカミほか、多彩で豪華なゲストが参加している。
シバリを効かせたことで、彼が得た自由とは?

 実は我々も、心の底ではこうしたシバリを歓迎したのだ。音楽で自由を目指すと言っても、曖昧なものになりやすいし、型に陥りやすい。それよりむしろ、歴史にまつわるシバリを効かせたほうが、今、この瞬間に伝えるべきことを(いったんは間接的になりつつも)結果的にはリアルに伝え易くもなる。

「僕の印籠知りませんか?」という、大切な印籠を紛失してしまった主人公の歌がある。これなどは、スマホに依存しすぎている現代社会への警鐘としても聞けるのだ。

彼がずっとお得意なのは、10秒聴けば腰が動いてしまう極上のファンク・ミュージックである。でもこうした音楽は、歌詞に重きを置きすぎると頭でっかちになり、むしろ聴く者の腰を重くする。とはいえまったく無意味では、言葉の無駄遣いが耳に余る。このあたりが難しい。レキシはその点、音楽における言葉の役割である、イミとノリの上手な折衷を実現させる(もちろん、韻を踏んだりといったテクニックも駆使しつつ…)。

平和を願う(?)「きらきら武士」

 ここからは、代表曲のひとつといえる「きらきら武士」について書いていこう。改めて歌詞を眺めてみると、ゲスト・ボーカルとして招かれているDeyonna(椎名林檎)が、主人公に対して[マゲ結うの待って]と歌いかけている場面がある。ここは重要だ。

マゲというのはそもそも、合戦に際して兜を被る時、頭がムレない工夫として生まれたものとされる。となると、それを[待って]ということは、御台所(または、お姫様?)とおぼしき女性は、好きな相手に戦いを望まず、このまま私を城の外へ連れ出し、平穏に暮らすことを望んでいると推測できる。この歌は、つまり平和を願う作品なのである。

“武士”はやがて“ブーツィー”に

 もうひとつ。最後まで聴くと、“武士”がある言葉に変化し、終わっていることが確認できる。[ブーツィー]だ。これは人名で、オハイオ州出身のベーシストでボーカリストのウィリアム“ブーツィー” コリンズのことである。[メガネが星]というのは、このアーティストのトレードマークが星型のサングラスであることから来ている。でもその星は、レキシ・コンセプトにあてはめれば手裏剣にも似ていて、[武士=ブーツィー]、[手裏剣=星型のサングラス]というあたりが、この歌のアイデアの源とも想像できる。

なお、彼の作品は戦国時代や江戸時代が中心と思いきや、「狩りから稲作へ feat. 足軽先生・東インド貿易会社マン」のような、ホモサピエンスの約1万年前の営みにも目配せした、悠久のロマンあふれる作品もある。
INFORMATION

6th アルバム 『ムキシ』
2018年9月26日発売
完全初回生産限定盤
(CD+DVD 手書きジャケット付き)
VIZL-1440 ¥3,800(税抜)
通常盤(CD+DVD)
VIZL-1441 ¥3,800(税抜)
通常盤(CD) VIZL-65054 ¥3,000(税抜)

ジャケット画像です。
<収録曲>
03.GET A NOTE ~下駄の音ver.~
アマゾン画像です。
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