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第66回 DREAMS COME TRUE 「あなたのように」
 DREAMS COME TRUEの3年ぶりのオリジナル・アルバム『THE DREAM QUEST』のジャケットを手にした時、僕はこう呟いた。「ブロンズ像になっちゃうのは、まだ早いのでは…」。しかしよく目を凝らしてみると、そこに居るのは彼ら二人のようで、似てる他の誰かのようにも思える。そして独自に、このヴィジュアル展開を、勝手に想像し、こう読み解こうとした。

[実績を打ち立てた=ブロンズ像]という世間一般のイメージがあるが、彼らはそれを受け入れるかのようでいて、安住せず、さらにさらに先を目指そうというのだろう。再びジャケを見て欲しい。もしこれが像ならば微動だにしないハズなのに、やけに“動的”だ。すぐ動きだしそう…。これぞ安住せず、の、動かぬ証拠。本人達の制作意図は不明だが、これが僕のオリジナルな解釈だ。“QUEST”(=探求)という言葉をタイトルに選ぶあたりにも、その意志がハッキリと現われてる。

彼らが探求するのは、これからもポップ・ミュージックだろう。でもそれは、芸術性を高め、美術館に飾ることではない。あくまで“市井の人達のためのシンフォニー”として鳴り響くべきだ。

多様な“ように”が“あなた”を生き生きと描写

 そんなテーマから語るべきは、「あなたのように」だろう。この歌の“あなた”は、様々に想像できる。でも、選び抜かれた、傑出した、みるからに逸材であるヒト、ではなく、どこにでもいそうな、長所もあるけど短所もある、人間臭いキャラクターが浮かぶのだ。その意味で、この作品はさきほど僕が書いたポップ・ミュージックの条件とも合致する。

吉田美和の詞について、細かくみていこう。この歌は、「あなたのように」というタイトルゆえ、ポイントとなるのは“ように”の中身だ。通常、“比較した場合、同じようなものである”場合、このコトバを使うのだが、この詞に限っては、それを絞り込むことはしていない。幾つもの“ように”が散りばめられる。それが“あなた”の人生哲学、行動規範、さらに性格などを、ランダムに伝える。こういう面もあり、こういう面もある…。こちらに与えられる情報が増えていき、やがて“あなた”の人物像の輪郭が、徐々に明確になっていく。
ジャケット画像です。
「あなたのように」
2016年5月2日
ユニバーサルシグマ
歌詞を見る。
DREAMS COME TRUE
吉田美和(Vo)と中村正人(Ba/リーダー)による2人組バンド。1988年結成。翌年にはメジャーデビュー。吉田のパワフルで突き抜けたボーカルワークと、ソウルミュージックのテイストを散りばめたポップな作風が、徐々にミュージックシーンを席巻。吉田が描く等身大の歌詞も、同世代の女性から多大な共感を得る。名実ともにJ-POPシーンを代表するグループであり、特にアルバムセールスにおいて圧倒的な存在感を見せる。2017年10月10日に18枚目のオリジナルアルバム『THE DREAM QUEST』をリリース。2019年にはデビュー30周年を迎える。

カタめの表現とカジュアルな表現

 その際、コトバの並べ方を、一定のリズム(例えば七五調とか…)にするのではなく、意表を突く選び方などもみられる。[多分に漏れず]というカタめの表現がある一方、[めっちゃ負けず嫌いで]のような、カジュアルな表現も並ぶ。コトバ本来のイントネーションとメロディは、喧嘩してはダメだから、様々な手触りのコトバと様々なメロディの抑揚が、ともに歩み曲を構成する。

アルバムのライナーノーツを読んでみると、「『愛しのライリー』はどちらかというと、親の立場から娘に向けて歌った歌なんですけど、『あなたのように』は逆の立場を歌ったもの」という、そんな中村正人の言葉もみられる。曲順の妙、ということだし、ナルホドと思う。アーティスト本人の言葉以上に説得力のあるものはない。この2曲が並んでいるというのは、まさにアルバムを聴く醍醐味につながるだろう。

結びの言葉、“ような”が醸し出す余韻

この歌は[いつかあなたのように]で始まり、[いつかあなたのような]で終わる。この対になっているフレーズは、何を伝えようとしているのだろうか。人それぞれ、様々な受け取り方が可能だろうけど、自分にとって、人生のひとつのお手本となるかもしれない存在に、少しでも近づこうとした時、歌の冒頭の“ように”では漠然としていたことが、“ような”になると、すこし具体的になるというか、歌詞が終わっても、この曲の新感覚のワルツ・テンポに乗せて、あとに続くコトバが目の前に現われるかのようでもある。この歌のすべては、この瞬間のためにある、と、そう言ってもいいくらいの余韻となる。

「あなたが笑えば」のなかのコトバの“引き算”

 もう一曲、この曲についても書こう。ところで、非常に根本的なことを…。吉田美和の作詞。中村正人の作・編曲。この二人のコンビネーションは、おそらく、外部の人間の想像を越えたところで強固かつ柔軟なのだろう。詞先・曲先という、曲作りの分業を表わす言葉があるが、常に二人は、実質的には“同時にひとつの粘土を捏ねている”のだと思う。そして、新鮮な表現は常に“ちょっとした違和感”と隣り合わせであることを知っていて、それでも必要とあらば、そこへ踏み込んでいく勇気を持っている。ただ、その勇気は、自分達の表現力を信じているからこそ実現するものでもある。

特に吉田の詞は、歌うことで完成する、ということを、徹底している。詞作の段階では、“表現”を引き算することも辞さない態度も見受けられる。特に感情の伝え方においては、「声」そのものが纏うことが出来る“感情”を、事前にコトバで細かく解説し過ぎないよう、あえて“感覚的なまま放置する”ことも行っている。まさに勇気がいることだろう。特に今回のアルバムでは、「あなたが笑えば」など、そうだろう。

全体として、[元気なさそう][いいことばっかじゃない]など、ネガティヴな気分をあれこれ引き受けている歌でもある。しかし、だからこそ“笑う”という感情表現が、闇のなかの光のように愛おしいものとして強調される。

「?」、「?!」、「:):)」の意味

 歌詞カードを見ると、「?」はまだしも、「?!」や「:):)」などのマークを、語尾に加えている部分がある。特に2番目だ。あえて「?!」を歌詞に表記するあたり、感情の乗せ方を指定するという意味では、彼女のなかで重要なことだったのだろうと。では、みっつめの[(たいていあなたのせいだしぃ):):)]はどうなんだろうか? この場合は絵文字の“笑顔のマーク”を横にしたもの、ということのようだが、相手に対して手を焼いているのだけど、でもそれも自分にとっては愛しさを伴ったもの、というニュアンスを、歌に込めるために、あえて加えているものと推測出来る。

これらはすべて、しつこいようだが、歌唱表現されて完成する姿を想定しての工夫だろうが、しかし歌詞カードが存在する以上、コトバはコトバとして単独でも機能し、もちろん「詞」として読み込んでも意味は伝わるように出来ている。“行間を察してください”的な言い訳に逃れようとするわけじゃない。

最後に再び『THE DREAM QUEST』のジャケの話

ところでジャケットの“ブロンズ像”のことなんだけど…。CDに封入されたブックレットをよく読むと、“ドリ・クエ”に登場するキャラのひとつ第十一音使徒のjiganeが、誤ってふたりを純金に変えてしまった、ということのようだ。でもおそらく、冒頭でぼくが書いた推測は、そんなに間違ってないような気もしているのだが…。
INFORMATION
NEW ALBUM『THE DREAM QUEST』
2017年11月1日発売
UMCK-1818 ¥3,000 (税抜)
ジャケット画像です。
<収録曲>
01. THE THEME OF THE DREAM QUEST
02. KNOCKKNOCK! - TDQ VERSION -
11. 愛しのライリー - TDQ VERSION -
13. THE DREAM QUEST - OVERTURE -
14. 九州をどこまでも - SINGLE VERSION -
15. 愛しのライリー - SINGLE VERSION -
16. KNOCKKNOCK! - SINGLE VERSION -
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