忘れたいのか、忘れたくないのか、知りたくて。

 2024年5月1日に“汐れいら”が新曲「備忘ロック」配信リリースしました。今作は“彼女のことでしか曲を作れないバンドマン”を歌った曲。主人公のバンドマンは、二度と会うことができない彼女との生活や交えた言葉を振り返り、まるで備忘録を作るかのように言葉を紡いでいきます。さらに8月14日には自身初のCDである1st EP『No one』のリリースも決定!
 
 さて、今日のうたではそんな“汐れいら”による歌詞エッセイを2週連続でお届け! 今回は第1弾。綴っていただいたのは、新曲「備忘ロック」にまつわるお話です。備忘録は捜索願みたいなもの。では一体、何を捜して、その先で何を見つけるのか…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



備忘録って、わたしの捜索願みたいなもの。
 
忘れたくないものをかき連ねる一方で、安心して忘れるためにかくような気もする。
忘れたくないのに、忘れたい。
 
こんな風に、人生には矛盾や葛藤みたいな言いようのない感情が付き纏って、時々自分が行方不明になることさえある。
 
そんな時に、かいている。
忘れたいのか、忘れたくないのか、知りたくて。
備忘録に閉じ込めたあと、それでも自分の中に残っているものが大事にしているものなんだ、ってそこでようやくわたしが見つかる。
 
元々着ていた服じゃなくても、考えていることが違っていても、変わっていっても、
他の人がわたしを忘れてしまっていても、わたしだけはわたしになった経緯を思い出せるように。
 
備忘録って、彼の捜索願みたいなもの。
 
「備忘ロック」をかいたバンドマン。
 
彼は、彼女との生活を忘れたくなくて、でもどこかで忘れたかった。
彼女のことをかいて、その音楽ばかりが売れる。
嬉しいけれど悔しくて、そんな感情のせいで大切なものがわからなくなっていた。
 
そんな中で、自分が見つかる前に、彼女が行方不明になってしまった。
音楽もうまくいかない。
 
それでも彼の中に残っていたのは彼女だった。
 
 
備忘ロックって、彼女の捜索願みたいなもの。
 
彼は、もう忘れたくなかった。
他の人が彼女を忘れてしまっても、彼だけは彼女がそこにいたことを思い出せるように。
かくだけじゃなく、ずっとうたって。
 
 
きっと彼女は、彼の創作願を。
 
<汐れいら>



◆紹介曲「備忘ロック
作詞:汐れいら
作曲:汐れいら