あたしが泣くの、珍しいんだよ、地獄だろうとついてきて。

あなたを好きになって 本当に良かった
助けて おかしくない
あたしが泣くの 珍しいんだよ
地獄だろうとついてきて
「エロティシズム」/アカシック

 ヨコハマ生まれ繁華街育ちのボーカル・理姫が率いる4人組バンド“アカシック”が、2017年10月18日に2ndフルアルバム『エロティシズム』をリリースしました。タイトルの【エロティシズム】とは、愛欲や性欲を呼び起こす性質を持った芸術作品を意味するものです。その言葉のとおり今作は、強烈な愛の匂いに満ちた楽曲揃い!キラーフレーズが次々と、わたしたちのなかに潜む“愛する気持ち”をも揺さぶります。

愛に邪魔なものは消す
「エロティシズム」/アカシック

これが一途か気が狂いそうだ
死ぬまでどうやって続けるんだ
幸せだったこと自慢したい最期は
「憂い切る身」/アカシック

骨を
血を
飲んでも
あたしだけのものに出来ない
「邪魔」/アカシック

 もはや想いのメーターが振り切れすぎていて、どこか心が壊れてしまっているような異常な愛にさえ感じられるかもしれません。しかし<あたし>の言葉の“芯”にあるのは、誰もが抱いているであろう、または望んでいるであろう、気持ちや願いなのではないでしょうか。たとえば、アルバム収録曲の「いちかばちかちゃん」の歌詞に注目してみます。

黒眼にあるカラコンとって
目が痛い ぼやけるから目舐めて

必死に恋するの自嘲しいちに
天婦羅何本食べたっけさんし
同じシャンプー使ってよねぇねぇ
ごーろくしちはちきゅーじゅー0に戻る


ねぇねぇ ぎゃーぎゃー爪たてて傷つけたいあたしと
天命に任せて寝た 死んだ眼が好き好きだよ
だから元気じゃなんか嫌い
「いちかばちかちゃん」/アカシック

 冒頭から<目舐めて>と、かなり猟奇的なフレーズ。ちなみに、タイトルに含まれる【一か八か】という言葉は、カルタ賭博から発生した慣用句なのだそうです。結果がどうなるかはわからないけれど、運を天に任せて思いっきりやってみることを意味しております。この“いちかばちかちゃん”である<あたし>は<天命に任せて寝た 死んだ眼>をした<あなた>との恋に“何か”を賭けてみたというわけですね。

 その何かとは、おそらく“普通の暮らし”なのだと思います。少し歌詞を深読みしてみると<黒眼にあるカラコン>は、衣食住の【衣】を。<天婦羅何本食べたっけ>というフレーズは【食】を。<同じシャンプー使ってよ>というフレーズは【住】をイメージさせます。つまり、彼女は<あなた>と生活をし続けていくことに賭けているのです。また、さらに進んだ先に待ち受けているであろう“結婚”に賭けているとも言えるでしょう。

高い苺冷蔵庫の中
風邪ひかないで あたためて食べてね

晴天今日行かない大嫌いいちに
同じシャンプー使ってよさんし
鬱陶しい携帯いらない捨てて
ごーろくしちはちきゅーじゅー0に
戻んなよくそったれが
「いちかばちかちゃん」/アカシック

 そう考えると、歌詞に綴られている“いちに、さんし、ごーろくしちはちきゅーじゅー”とは、一日ずつ生活を重ねて“結婚”というひとつの目標に向かってゆくカウントにも思えてきます。とはいえ、結局は<ぎゃーぎゃー爪たてて>ケンカをしたりして、信頼が何度も0に戻ってしまう二人…。ただ、そんな空回りの賭けに対する<0に戻んなよくそったれが>という言葉は、普段あまり口にできない苛立ちを代弁してくれているかのようで、曲を聴いていて非常にスカッとするフレーズでもあります!

前髪伸ばすか切るか
それだけで今日は終わった
さよなら 神さま様

スーハー 苛立ち殺すために息してもう嫌だよ
スーハー 威嚇ファボ髪掻き乱して嫌い
ねぇねぇ ぎゃーぎゃー爪たてて崩れていくあたしを
天命のせいにして見殺すなら消えて
スーハー スーハー

切って切れぬ虚構でこの様見ていくって
絶対約束判子ください
あなたが元気じゃなんか不安
実際笑っちゃって ほんとごめんね
紅ひいて 歌う世界
世話無い
「いちかばちかちゃん」/アカシック

 さて、一か八かで始めた恋ではありましたが、<あなた>へのいろんな苛立ちを殺すために<スーハー スーハー>と深呼吸している<あたし>はもう、ただの運任せではないようです。だからこそ<さよなら 神さま様>という宣言もしているのでしょう。きっと彼女は一か八かだったこの恋を、ちゃんと穏やかな愛に溢れた“普通の暮らし”に変えてゆくために必死で努力しているのです。もしかしたら<絶対約束判子ください>とは、婚姻届のことを意味している…のかもしれません。

 そして、前述した「エロティシズム」や「憂い切る身」や「邪魔」の主人公たちの“芯”にある気持ちも、この「いちかばちかちゃん」の<あたし>と同じなのでしょう。大切な人と普通の暮らしをしていきたい、平凡な愛のなかで生き続けたい、誰かと生涯を共にしたい、そのような普遍的な気持ちが通じているのです。それをただ全身全霊で叶えようとしているのです。だからこそ、『エロティシズム』の収録曲は、どんなに過激なフレーズが描かれていようと、他人事ではなく聴く者みんなの心を揺さぶるのでしょう。是非、1曲1曲の愛の匂いを、歌詞からも堪能してみてください!

◆2ndフルアルバム『エロティシズム』
2017年10月18日発売
WPCL-12755 ¥3,000(税別)

<収録曲>
1 憂い切る身
2 いちかばちかちゃん
3 邪魔
4 裸-nude-
5 私
6 マイラグジュアリーナイト
7 ブラック
8 LOVE&YEN
9 オレンジに塩コショウ
10 日本の宝
11 愛×Happy×クレイジー
12 エンジェルシンク
13 you&i
14 エロティシズム