尖った先が今日もまた、僕の心に鋭く突き刺さる。

 ももいろクローバーZの“有安杏果”が、2017年10月11日に1stソロアルバム『ココロノオト』をリリースしました。現在、歌ネットで特集インタビューを公開中!今作の収録曲は“曲が生まれた順”に並んでおり、最後の2曲「色えんぴつ」と「ヒカリの声」が、今年に作られた曲なのだそうです。取材では、その「ヒカリの声」の歌詞についてたっぷりお伺いしましたので、今日のうたコラムでは「色えんぴつ」をご紹介!まず“色えんぴつ”というと、次の言葉を思い出しました。

色えんぴつと同じ。
大事なものから先になくなるの。
(ドラマ『最高の離婚』より引用)

 色えんぴつを擬人化してみると、その人生にとっての幸せとは、誰かのお気に入りの色になって、たくさん使ってもらって、削られて削られて小さくなって命を全うすることなのでしょう。しかし、大事なものから先になくなってゆくということは、逆に、あまり使われずにずっと長いままの“色えんぴつ”だってあるということ。最悪、一度も使われずに捨てられてしまう可能性だってありますよね…。そして、有安杏果は「色えんぴつ」で、そんな孤独な“色えんぴつ”の<僕>の物語を描いたのです。

薄っぺらな缶ケース
毎日その中佇んでる
ひっそり端っこ佇んでる
ここが僕の居場所なんだ

誰かに気づかれることもなく
いつだって変わらない
1mmだって変わらない
「色えんぴつ」/有安杏果

 色えんぴつにとっての<薄っぺらな缶ケース>とは、人間にとっての教室や職場のようなものなのかもしれません。その中に12本、24本、36本、それぞれ違う色を持った彼らが並んでいるわけです。どんどん活躍してゆく奴もいる。いざというときに使われる奴もいる。他の色と交じり合って、新しい色を生み出してゆく奴もいる。でも<僕>だけは<いつだって変わらない 1mmだって変わらない>のです。誰かの指に触れられることなく<ひっそり端っこ佇んでる>だけなのです。その苦しみはサビで吐き出されてゆきます。

尖ったままの僕の苦しみ
誰かわかってくれるかな
まあるくなって短くなって
ポイって、ほら捨てられるより辛いのさ
尖った先が今日もまた
僕の心に鋭く突き刺さる
「色えんぴつ」/有安杏果

色を持たない僕の寂しさ
誰か分かってくれるかな
上塗りされて混ざり合って
ほらって違う色になるより辛いのさ
尖った先が今日もまた
僕の心に鋭く突き刺さる
「色えんぴつ」/有安杏果

 たしかに、使われない色えんぴつは、最初に削られたあと<尖ったまま>ですよね…。そんな自分のふがいない姿を思い知るたびに<尖った先が今日もまた 僕の心に鋭く突き刺さる>痛み、経験したことがある方も多いのではないでしょうか。ただ、この時点で<僕>には何の“意志”も“行動”もありません。苦しい、辛い、寂しい、痛い、わかって。負の感情の中に隠れて、自ら<色を持たない>色えんぴつになってしまっているのです。このまま自分の心を動かさないと、何も起きないし、見つめるだけの世界を愛することもできないでしょう。

だけど
君の哀しみの涙を薄め
くすんだ心のひとすじの光になる
僕にだって出来ることあるんだ

尖ったままの僕のプライド
君がそっと削ってくれて
まあるくなって短くなって
ハイって、やっと君の役に立てるんだ
尖った先が今日だけは
君の心を優しく映し出す
尖った僕でもいつかきっと
君の優しい心に
彩りつけられるはずだから
「色えんぴつ」/有安杏果

 しかし、初めて“誰かのため”を意識したとき、心は動き始めます。多くの人々からは人気がなかったとしても、たったひとりの<君>が<そっと削ってくれて まあるくなって短くなって>役に立てるかもしれない。たったひとりの<君>の<哀しみの涙を薄め くすんだ心のひとすじの光になる>ことができるかもしれない。そうやって<僕>は<君>に描かれることで救われ、<君>もまた<僕>で描くことで救われるのです。きっと、これまで使われることのなかった長い色えんぴつだからこそ、その分これからまだまだ、もっともっと、頑張ることができるのだと思います。

 自分のためではなく、誰かのためにということを考えたとき、世界を変えてゆくことができるのだということを、この「色えんぴつ」は教えてくれているような気がしますね…!みなさんは、自分を色えんぴつに例えるなら、何色ですか? その色は、何のために、誰のために、使いたいですか…?

◆1st SOLO ALBUM「ココロノオト」
2017年10月11日発売
初回限定盤A(CD+Blu-ray) KICS-93535 ¥3,704+税
初回限定盤B(CD+CD) KICS-93536 ¥3,704+税
通常盤(CD Only) KICS-3535 ¥2,778+税

<収録曲>
1. 心の旋律
2. Catch up
3. ハムスター
4. ペダル
5. feel a heartbeat
6. Another story
7. Drive Drive
8. 裸
9. 愛されたくて
10. 遠吠え
11. 小さな勇気
12. TRAVEL FANTASISTA
13. 色えんぴつ
14. ヒカリの声