水をちゃんとあげてないからだと、きっと君はそう言うだろうな。

ぽつりぽつりと
ながめ世にふる
空の青さも
いつか忘れる
「モノローグ」/ORANGE POST REASON

 4行の「モノローグ」=【独白】で幕を開けるのは、4人組バンド“ORANGE POST REASON”が2017年9月13日にリリースしたニューアルバム『GREEN』です。尚、1stアルバムである前作のタイトルは『BLUE』であり、今作も色で繋がっております。悲しみのイメージも含む青。そこに黄色という明るみが加わることで生まれる“緑”には、一体どのような楽曲たちが収録されているのでしょうか。まず、冒頭でご紹介した1曲目は、まだどこか“青”の名残を感じませんか?

 歌詞内の<ながめ>というワードには、一般的に三つの意味がある模様。ぼんやり眺めることや物思いを表す【眺め】と、詩歌を作ることである【詠め】と、長く降り続く雨【長雨】です。いずれの意味も、この曲にふさわしいような気がします。物思いも、歌も、雨も、ぽつりぽつりと世に降り続ける。そして<空の青さも いつか忘れる>…。おそらく<空の青さ>とは“青”の希望的な面や、幸せだった頃の記憶を指すのでしょう。わたしたちは、こうしていつのまにか忘れてしまう“明るみ”がある。『GREEN』はそんなメッセージのバトンを『BLUE』から受け取り、今作の入り口で伝えているのかもしれません。

水をあげ過ぎてしまったのか
あの花は枯れ果ててしまった
水をちゃんとあげてないからだと
きっと君はそう言うだろうな

君がここにいてくれたのなら
僕はどんな物も差し出すのに
君がいなくなる その言葉は
僕だけに優しいものだった

忘れ形見は枯れた花びら
もう戻れはしないな
「レイングリーン」/ORANGE POST REASON

 さて、1曲目の「モノローグ」に続く2曲目はこの歌。タイトル「レイングリーン」は、先ほどの“雨”+アルバムテーマカラー“緑”ですね。ここからは、綴られている感情がまさにブルーからグリーンへと変化していると言えるでしょう。物語自体は<君がいなくなる>という悲しいシチュエーションなはず。しかし、主人公はそれを<僕だけに優しいものだった>と感じているのです。どうしてなのでしょうか。

 きっと<水をあげ過ぎてしまった>ゆえに<枯れ果ててしまった>花こそが、この恋を象徴しているものなのだと思います。同じように“僕”は“君”という花に愛を注ぎ過ぎていたのではないでしょうか。しかもそれは“君”には<水をちゃんとあげてない>と感じられてしまうような、伝わりにくい愛の形で。たとえば、相手のすべてをただただ受け入れること。本当は<君がここにいてくれたのなら 僕はどんな物も差し出す>くらい好きなのに、別れさえ受け入れること…。

雨上がりの匂いが好きと
水たまりを見て 君が言った
涙声で笑った君に
最後まで何も言えなかった

そっと 静けさに 消えていく
そっと ゆくりなく 消えていく
「レイングリーン」/ORANGE POST REASON

 その不器用な愛は<最後まで何も言えなかった>という姿からも伝わってきますね。ただ、主人公の記憶に残っているのは悲しみのブルーの“雨”ではありません。<雨上がりの匂いが好き>と言った君や<涙声で笑った>君の姿なのです。そんな“僕”だからこそ別れを<優しいものだった>なんて感じることができたのでしょう。ちなみに、グリーンという色が連想させるイメージは、安らぎ、保守的、穏やか、未熟などなど。どれもどこか“僕”の性格を表しているようでもあります。

 また、1曲目「モノローグ」では<ぽつりぽつりと ながめ世にふる 空の青さも いつか忘れる>という独白がありましたが、「レイングリーン」には<雨上がり>という言葉が登場し、空の青さが戻ってきそうな“明るみ”がほんの少し感じられます。その明るみによって『BLUE』は『GREEN』へと変わり、2曲目以降、さらに希望や再生の物語が見えてくるのではないでしょうか。是非、その先の収録曲の歌詞もチェックしてみてください…!

◆2nd Album『GREEN』
2017年9月13日発売
UCO-003 ¥2,300+tax

<収録曲>
1.モノローグ
2.レイングリーン
3.バックパッカー
4.チップス アンド チョコレート
5.エピソード
6.3mm
7.マイナーコード
8.ランドタワー
9.アイナラバ
10.花コトバ
11.マイルストーン