私はここだよ、少しずつ恋が近づくたびに、あと少しって泣いた。

さよなら私の恋心
明日はきっと
晴れるでしょうか 夕焼けが
あまりに綺麗だったから
「さよなら私の恋心」/新山詩織

 大切に育んできた恋心に、そっと別れを告げるフレーズで幕を開けるのは“新山詩織”が2017年9月6日にリリースする新曲です。今作には“Chara”がサウンドプロデュース&楽曲提供で参加しております。歌詞は二人の共作。彼女たちの音楽に含まれている【切なさ】がお互いに相まって、新山詩織の歌声ひと粒ひと粒から、淡い想いがポロポロと溢れてくるかのよう…。今日のうたコラムではそんなラブソングをご紹介いたします。

 まず、ピックアップした歌の冒頭に綴られているは、時系列で言うとラストシーンの心情なのだと思います。そして続く歌詞には、こうして主人公が<さよなら私の恋心>と告げて決別するまでの物語と、ひたむきな恋心が描かれているのです。では一体“私”は、どのような気持ちを抱きながら、綺麗な夕焼けを眺めたのでしょうか…。

色んなものに気がついた
最終バスで行こう
切ない私の恋心
今なら言えるはず

あともう少しだけ
ふたりそこに居たかった

あなたからの全部 全部
今も大切で
拾って抱いたのよ
消してないんだ
「さよなら私の恋心」/新山詩織

 歌詞を読んでみると、二人の関係は、彼女の片想いとも、もうすでに別れてしまった(もしくは距離を置いている)恋人同士とも考えられますね。また<最終バス>の行き先も、2パターンありそうです。それが【あなたのところ】だとしたら、彼女は<色んなものに気がついた>からこそ、今まで言えなかった<切ない私の恋心>を<今なら言えるはず>だと、彼に伝えに向かったのでしょう。

 しかし、行き先があの【夕焼けが見える場所】なのだとしたら、彼女はすでに失恋した後なのではないでしょうか。気がついた<色んなもの>とは、もう自分の恋が叶わないのだということ。そして<今なら言えるはず>の言葉とは、きっと<切ない私の恋心>への“さよなら”です。ただ、行き先がどちらにせよ、最終バスのなかで“私”は<あなたからの全部 全部>を改めて大切に抱きしめていたことでしょう。

でも切ない気持ちに気づかない
私はここだよ
少しずつ恋が近づくたびに
あと少しって泣いた

あの胸が痛いほどの想い
忘れそうだよ
「さよなら私の恋心」/新山詩織

 このフレーズも、過去を振り返っているようでもあり、現在のことのようでもありますが、彼はいつだって、いくら彼女が<私はここだよ>と心の中で叫んでも、ずーっとその<切ない気持ちに気づかない>のです。<少しずつ恋が近づくたびに あと少しって泣いた>…。言えそうで言えない、届きそうで届かない、そんなもどかしさのなか、必死で恋心を守り、大切に想いを育ててきた“私”の切実が伝わってきます。

優しいだけじゃおかしいな
おかしいことは悲しいな
悲しいことが優しいな
優しいだけじゃおかしいな

さよなら私の恋心
夕陽を見に行こう
言えないまま捨ててきました
言葉は戻らない
「さよなら私の恋心」/新山詩織

 このように幕を閉じてゆく歌。彼女は結局、大切な人に大切な言葉を<言えないまま捨てて>しまったのです。そして独り、冒頭に綴られていたあの綺麗な夕焼けを見つめたのでしょう。もしかしたら本当は「夕陽を見に行こう」と伝えて、一緒に景色を焼き付けたかったのかもしれませんね…。しかし、叶うことはなく、彼女は<私の恋心>にさよならを告げました。その心はきっと、夕陽が沁みるようなほんの少しの後悔と、夕陽の温もりのような誰かを想い尽くした気持ちに満ちていたのだと思います。

 優しいから悲しい。悲しいけど優しい。そんな新曲「さよなら私の恋心」を是非、チェックしてみてください。

◆NEW SINGLE「さよなら私の恋心」
2017年9月6日発売
初回限定盤(CD+DVD) JBCZ-6064 ¥1,500+税
LIVE盤(CD+DVD) JBCZ-6065 ¥1,700+税
通常盤(CD) JBCZ-6066 ¥1,000+税

<収録曲>
01.さよなら私の恋心
02.らくがきちょう
03.さよなら私の恋心 -Instrumental-