不思議だね、あなたがいなくても世界が続くなんて…。

不思議だね あなたが
いなくても世界が続くなんて
目覚ましが鳴れば起きて また独り
夜が明けてしまった
「あなたのいない、この世界で。」/fumika

 目が覚める、と称される歌声を放つ女性シンガー“fumika”が、2017年7月12日に12th Single『あなたのいない、この世界で。/DANGEROUS feat.RG』をリリースしました。冒頭でフレーズをピックアップした表題曲は“見田村千晴”さんとの共作詞。今日のうたコラムでは、その涙腺破壊力バツグンな失恋ソングをご紹介いたします。まず、みなさんは「この人がいなくなったら自分は生きていけない」と思ったこと、ありますか…?

 歌の主人公はそれくらい全心で“あなた”のことを愛していたようです。しかし現実では、サッドエンドのあとだってちゃんと日常は続いてゆくんですよね。壊れたくても壊れられない、そんな苦しさが<夜が明けてしまった>というフレーズに込められているように思えます。今、彼女にとって「必ず夜は明ける」なんて言葉は、プラスの意味を成さないのでしょう。むしろ「いっそこのまま目が覚めなければいいのに…」という想いで毎夜、眠りについているのではないでしょうか。

あなたの声も くしゃっと笑うその頬も
いつだって 見上げれば届いたの

愛してたの ねえ 教えて
こんなのずるいよ
心の中に居たって触れらんない
私 弱くないよ
ちゃんと笑えてるよ
空っぽの心 置き去り
ねぇ あなたはいないのに
まだ 胸の奥 震えてる
「あなたのいない、この世界で。」/fumika

 そして、大切なひとがいなくなっても続いていくものは日常だけではありません。もう<あなたはいないのに>、一緒にいた頃の記憶も、彼の声も笑顔も、まだ鮮明に<胸の奥 震えてる>のです。相手からの愛を失くしても、自分の「愛している」という気持ちは続いていくのです。だからこそ、サビの<私 弱くないよ ちゃんと笑えてるよ>というフレーズは、単純に、彼女の強さや前向きな気持ちだけを表しているものではないことがわかります。2番のサビには次のような言葉が綴られております。

私 泣いてないよ
涙 こぼさないよ
あの日の約束だから
ねぇ 季節は変わるのに
進めない私
どうしようもない

真夜中の喧嘩も くだらない駆け引きさえ
片方だけの靴下みたい
意味が無いよ
戻らないよ
「あなたのいない、この世界で。」/fumika

 <弱くないよ ちゃんと笑えてるよ>、<泣いてないよ 涙 こぼさないよ>と強くあろうとしているのは“あなた”との<あの日の約束>があるから。逆に言えば、その約束が<季節は変わるのに 進めない私 どうしようもない>という今を作ってしまっているのかもしれません。でも、強がったって、その姿さえ相手には伝わらない、意味がない。守り続けているこの約束もまた<片方だけの靴下みたい>なものなのでしょう。

ねぇ あなたはいないのに
まだ 胸の奥 震えてる

ねぇ あなたがいなくても
まだ 胸の奥 震えてる
「あなたのいない、この世界で。」/fumika

 ただ、この歌は最後の最後でほんのちょっと“前を向く希望”が含まれている気がします。これまで<あなたはいないのに>と歌われていたのが、ラストだけは<あなたがいなくても>に変わっているのです。大概「~のに」という言葉の後には、ネガティブな続きが予想されますよね。だけど「~ても」はどこかプラスの可能性も感じませんか?つまり、「あなたはいないのに、生きてしまっている」気持ちから、少しずつ「あなたがいなくても、生きてゆかなきゃ」という気持ちに動いているということではないでしょうか。
 
 最近、失恋したばかりで、夜なんか明けなければいいのにと思うくらい落ち込んでいる方。是非、fumikaのこの曲を聴いてみてください。泣いて泣いて泣いて、でも最後のワンフレーズで少しだけ、“あなたのいない、この世界で。”生きてゆく光が見えてくるかもしれません…!

◆12th Single
『あなたのいない、この世界で。/DANGEROUS feat.RG』
2017年7月12日発売
YRCN-90273 ¥1,389+税

<収録曲>
1. あなたのいない、この世界で。
2. DANGEROUS feat.RG
3. 愛されたくて
4. FRIDAY NIGHT