だらしないキスをして、それからどうすりゃいいの?

心で見なくちゃ
ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは、目に見えないんだよ。
(『星の王子さま』より引用)

 6月29日は『星の王子さま』の作者であるサン・テグジュペリの誕生日であることから、星の王子さまの日と呼ばれております。人間にとって大切なメッセージがたくさん詰まっているこの本。冒頭でご紹介した言葉は、わたしたちの“恋愛”においても言えることです。みなさんは、恋人の考えていることがわからなくなってしまうときってありませんか?もしくは自分の本当の気持ちが、言動でうまく相手に伝わらないことはありませんか? それは、お互いの心を心で見られていないからなのかもしれません…。

アナタから流れる涙 目には見えない棘がある
いつだって オレの心臓(ココロ)に 
チクチクと刺さって抜けない
あとどれくらい傷ついてさ どれくらい傷つけたら
恋は愛になるんだろう…
「そんなんじゃない」/青柳翔

 今日のうたコラムでは、そんな心の目でうまく相手と見つめ合うことができない葛藤に苦しむ、大人の男のラブソングをピックアップ。劇団EXILEの人気俳優であり、昨年に歌手としてデビューを果たした“青柳翔”が2017年6月7日にリリースした2ndシングル『そんなんじゃない』です。作詞を手がけているのは三代目JSB、Flower、E-girlsなど多くのアーティストのヒット曲の歌詞を生み出してきた“小竹正人”氏。

 小竹さんの綴る切なく美しいフレーズには定評がありますが、今作でより一層際立っているのは、愛するがゆえの哀しみと痛み。主人公の<オレ>は、大切な人が流す涙に含まれた<目には見えない棘>を心で見て、ずっと痛みを感じております。なぜならその涙は、自分の言動が原因だから。しかし、彼の本当の気持ちはおそらく<アナタ>に誤った伝わり方をしているようなんです。

そんなんじゃない そんなんじゃない
泣かせたいわけじゃないよ
愛してる 愛してる
そうアナタに叫んだら
だらしないキスをして
それからどうすりゃいいの?
「そんなんじゃない」/青柳翔

 彼がどんな言葉を放ったのかはわかりませんが、その根本にある“かんじんなこと”は<愛してる 愛してる>という想いだけ。だけど<そんなんじゃない>ことばかりを、彼女は真実として受け止めてしまっているのでしょう。とはいえ、どうしたら<アナタ>が自分の心を見てくれるのか、<オレ>には方法がわかりません。だから<だらしないキスをして それからどうすりゃいいの?>と途方に暮れるしかないのです。

濡れながら 濡れながら
海の中抱き合ってた
あの夏に戻りたいと
あきれるくらいに願う

手を伸ばすと 触れてしまう アナタの抜け殻に
「そんなんじゃない」/青柳翔

 かつて二人には、抱き合うだけで気持ちまで一つになれるような頃もあったことが伝わってきます。しかし、一緒に過ごす年月を重ねるにつれ、相手を心で見なくなってゆき、少しずつ何かがズレてしまったのではないでしょうか。今も彼女はここにいるのに、彼はあの夏の<アナタの抜け殻>を恋しく思っているところもまた哀しいですね…。ラストは<これからどうすりゃいいの?>というフレーズで幕を閉じるこの歌。どうかもう一度、お互いに心で見つめ合い、星の王子さまが言う“かんじんなこと”に気づくことができますように…。

◆2ndシングル「そんなんじゃない」
2017年6月7日発売
【初回盤】 AICL3340~1 ¥1,620(税込)
【通常盤】 AICL3342 ¥1,200(税込)