懐かしいあの声が、寄り添う帰り道、元気にしてますか?

お元気ですか、という挨拶。
私はあなたのことを
憶えていて、気にかけていて、
あなたのことをおもっています、というしるし。
(江國香織「贈り物」より引用)

 作家・江國香織さんの『泣く大人』というエッセイ集のなかに綴られていた一節です。英語では【How are you?】という挨拶を日常の中で行いますが、日本で【お元気ですか】と口にすることは少ない気がしますね。喋り言葉というより“手紙”に綴ることが多い言葉なのでしょう。また、この【お元気ですか】という一言は、しばらく会えていなかった誰かとの月日を一瞬で、今と繋いでくれる魔法の言葉でもあるのかもしれません…。
 
 今日のうたコラムでは、まさにそんな【お元気ですか】というあたたかな想いが込められた新曲をご紹介いたします。シンガーソングライター“絢香”が5月10日にリリースした約3年ぶりのニューシングル「コトノハ」です!テーマは、手紙。ドラマ10『ツバキ文具店 ~鎌倉代書屋物語~』の主題歌として書き下ろされたミディアムナンバーで、“言葉”を通じて繋がる心を表現した歌詞に注目です。

懐かしいあの声が
寄り添う 帰り道
元気にしてますか?
あなたを思う日々

もっと素直に
ごめんねと言えたら
神様いまお願い
時を戻して

伝えたいことは
溢れるほどあるけど
あなたへの言の葉が
時を超えて
愛を結ぶ
「コトノハ」/絢香

 おそらく<懐かしいあの声>とは、実際に聞こえているわけではなく、帰り道に自分の心のなかだけで再生されているものなのでしょう。このように「コトノハ」は、今はそばにいない大切な人に<元気にしてますか?>と語りかけることから幕を開けるのです。そしてやはりこの一言は、過去と今を繋ぐ魔法の言葉。<もっと素直に ごめんねと>言えなかったあの時のことが鮮明に蘇り、伝えたい想いが今、溢れ出します…。

一文字記憶から
呼び覚ます 綴る日々
うららかな春の空
あなたを忘れない

もっと近くに
感じたくなったら
言葉の魔法使い
時を戻して

伝えたいことは
溢れるほどあるけど
あなたへの言の葉が
時を超えて
愛を結ぶ
「コトノハ」/絢香

 尚、絢香はこの曲について自身のTwitterで『新曲「コトノハ」は手紙から生まれた曲。私が17歳で上京してから、たくさんの手紙を送ってくれたおじいちゃん。久々に読み返してみたら、側にいるような温かさを感じた。もらった当時よりも深く理解できたことが沢山あった。3年前に亡くなったからもう会えないんだけど、言葉が繋いでくれた。そこから生まれた曲です』と綴っておりました。
 
 手紙って不思議ですよね。たとえば、手紙をくれた相手がもう会えなくなってしまった方である場合、現実での思い出はもう更新されることがありません。でも、文字を撫でてみれば、本当に“側にいるような温かさ”を感じることができるんですよね。そして、彼女が『もらった当時よりも深く理解できたことが沢山あった』と語るように、読むたびに何度でも新しくその言葉の意味を知ることもできます。そばにいなくても“コトノハ”が心の中のその人を更新してくれるのです。

 みなさんには、忘れられないコトノハはありますか? そのコトノハに今、どんなコトノハで返事をしたいと思いますか…? 自分にとっての大切な人を思い浮かべながら、是非、絢香の「コトノハ」を聴いてみてください!

◆ニューシングル「コトノハ」
2017年5月10日発売
SG+DVD AKCO-90053/B ¥1,800+税
SG AKCO-90054 ¥1,000+税

<収録曲>
01. コトノハ
02. センチメント
03. コトノハ (Instrumental)
04. センチメント (Instrumental)