あの時はなんでもない言葉たちが、今じゃかけがえのないことばかり。

いなくなるのって、消えることじゃないですよ。
いなくなるのって、いないってことが
ずっと続くことです。
いなくなる前よりずっとそばにいるんです。
(ドラマ『カルテット』第2話より)

 この言葉は、ドラマの物語中で、失踪してしまった夫さんを思い続けている女性が口にしたセリフです。大好きな人との別れを経験したことがある方なら、痛いほどよくわかる感覚ではないでしょうか。<大切なものはいつも失った後に気付く>とはよく言いますが、それはきっと『いなくなる前よりずっとそばにいる』からなんですよね。意識しなくても良いほどに当たり前だった“大切”の“不在”は、心にポッカリ穴を作るに違いありません。その穴はあまりに大きすぎて目を背けたくても背けられないのです。その穴を見るたびに、あの人のすべてを思い出すのです…。

今も君のことを思い出すよ
今も君のことで泣けちゃうんだよ
あれから何度何度何度時巡っても
二人は思い出の中で生きて
今君に逢いたくて
愛だけが残ってる
「君がいない世界は切なくて feat. KEN THE 390」/CHIHIRO
 
 さて、歌姫“CHIHIRO”が来たる3月29日にリリースする約2年ぶりのフルアルバム『KISS MISS KISS』にもそんな大切な人と別れることを歌った新曲が収録されております。今作のリードトラックで、ヒップホップMC“KEN THE 390”をフィーチャリングとして迎えた「君がいない世界は切なくてfeat KEN THE 390」という楽曲です。恋を手放すことの切なさ、儚さ、悲しみ、それを抱えて生きる現実を、彼女はどのように描いたのでしょうか…。今日のうたコラムではその歌詞をご紹介いたします。

これは空に送る哀のうた
届けどこかにいるのならば
涙が曇り空に滲んで
未完成なまるでPurple な World

何度何度何度目が覚めても
君がいない世界というのには変わりない
分かってる...でもね探してる
その声匂い
冗談交じりの会話さえも

君がくれた言葉たちが
(目を閉じる度に聞こえてくる)

今になって心に響いて
(胸の奥の奥の奥の方までも)
戻ってよいますぐ
触れたいよいますぐ
ねぇ涙が枯れないよ
「君がいない世界は切なくて feat. KEN THE 390」/CHIHIRO

 <未完成なまるでPurple な World>…冒頭でそんなフレーズがありますが、この曲のイメージはまさに“紫色”でしょう。<空に送る哀>=悲しみの“青”と、今でも戻ってきてほしくて逢いたくて仕方ない<愛>=“赤”が、グルグル交わって、心の中にパープルな世界を作り出しているのです。そして、この主人公もやはり大切な人が『いなくなる前よりずっとそばにいる』模様。どれだけ時間が経とうと、いえ、時間が経てば経つほど、<その声匂い 冗談交じりの会話さえも 君がくれた言葉たちが>胸の奥の奥の奥の方までも響いてくるんですね…。

切ない青に赤が混じって
泣ける色に染まってく空
あの時はなんでもない言葉たちが
今じゃかけがえのないことばかり
忘れない
終わらない物語
I'll be Missing You

今も君のことを思い出すよ
今も君のことで泣けちゃうんだよ
これから何度何度何度時巡っても
痛み抱きしめ今を生きていく
もう君はいないのに
愛だけが残ってる
I'll be Missing You

泣きたくて叫びたくて会えなくて切なくて
どうしようもないこの気持ちのやり場未だなくて
大切なものはいつも失った後に気付くって
そんなことは流行りの歌の歌詞だけだと思ってた
「君がいない世界は切なくて feat. KEN THE 390」/CHIHIRO

 <あの時はなんでもない言葉たちが 今じゃかけがえのないことばかり>、<大切なものはいつも失った後に気付くって そんなことは流行りの歌の歌詞だけだと思ってた>、どのフレーズを切り取ってもツラくて、苦しくて、恋を失った経験がある方には共感できるものばかりですねぇ(泣)。しかし、この曲は歌のラストで“紫”の色味が少し変わります。「君がいない世界は切なくて feat. KEN THE 390」は次のように幕を閉じてゆくのです。

些細なことばかりが目に焼き付いて
君の面影思い返すたびにまだきついね
でも今は前を向いて歩いていくと決めた
この君がいない空と世界は温かくて
「君がいない世界は切なくて feat. KEN THE 390」/CHIHIRO

 <君の面影思い返すたびにまだきつい>…でも、最後の<でも>のあとには、その“哀”をまだ抱えながらも前に進んでゆく強さと世界の温かさが綴られていますよね。ここで、青みが強かった暗い“紫”は、ほんのり赤く淡い“紫”に変わるような気がしませんか? このように、ただ単に別れる哀しみを描くだけではなく、その先の日常にも希望的な光を注いでくれるのがCHIHIROの歌詞なんですよね。だからこそ彼女の歌詞は長年、20代~30代の女性を中心に大きな共感を得ているのでしょう。

 また、フルアルバム『KISS MISS KISS』からは新曲「大好き」の歌詞も先行公開されており、こちらは全くテイストの異なるラブソングとなっておりますので、どちらも是非、チェックしてみてください!

◆ニューアルバム『KISS MISS KISS』
2017年3月29日発売
TECI-1536 ¥2,593円+税

<収録曲>
01.アイマイな二人
02.君がいない世界は切なくて feat. KEN THE 390
03.KISS
04.好きになっちゃいけない人
05.大好き
06.片恋
07.Lips (interlude)
08.Champagne Love
09.人生最低最悪の日
10.ただのトモダチ
11.卒恋
12.White Love
13.Love Love Love・makana・