あの人の最終回が、脳をグルグルいつも回っている…。

あの人の最終回が脳をグルグルいつも回っている
メガネはお留守だった はあ ため息まじりで
あの日のサンライズが銀色の光を放っている
自転車こぎだして いたわ

あの日の再放送が脳をグルグル今日も回っている
ここから連れ出して そうドロップキックで
あの日の缶コーヒー 味なんか覚えちゃいないな
溶けた思い出 水で薄めてる

ウソみたいに気持ちが消えたわ
くだらなくてキラキラしてた夏
バカみたいに途方に暮れたわ
今夜 わたしを連れてって
ときめき深夜の ミッドタウン
「ドロップキック・ミッドタウン」/sympathy

 高知県発の4人組ガールズバンド“sympathy(シンパシー)”が、2月22日にメジャーデビューアルバム『海鳴りと絶景』をリリースしました。今日のうたコラムでは今作から、聴く人によって様々な捉え方ができそうな物語を描いたラブソング「ドロップキック・ミッドタウン」をご紹介!おそらく<あの人の最終回>とは、恋人とのお別れの日です。<メガネはお留守>で<サンライズ(日の出)>が記憶に残っているということは、朝に何らかの“事件”があったのでしょう…。では、その後の歌詞を読んでみましょう。

アンコール最終話 彼女スカートひるがえし走り去った
アイツ追いかけて
まあドラマチックだわ
茜さすワンルームは 錆びれた鍵を残して
今夜この街おさらばね
ときめき深夜のミッドタウン
「ドロップキック・ミッドタウン」/sympathy

 <アンコール最終話>…。これは“彼女”というワードが誰を示しているのかによって解釈が異なりますね。まず“彼女”=“わたし”である可能性。あの日を回想して、自分のことを語り手のように表現しているということです。その場合“わたし”は、別れを告げられたその日に部屋を飛び出したのでしょう。しかし<スカートひるがえし走り去った>というと、何かに背を向けて逃げ出したような印象を受けます。もしかしたらあの日“わたし”は、ショッキングな出来事(たとえば浮気現場など…)を目の当たりにした…のかもしれません。

 もう1つは“彼女”=“彼の新しい彼女”である可能性。<あの日の再放送が脳をグルグル今日も回っている>元カノの“わたし”は、別れてからしばらく経ったある日、もう一度だけ会おうと彼の部屋に行ったのです。しかし、そこで話し合っている時にやってきて鉢合わせてしまったのが、彼の今カノ…。彼が元カノと部屋で会っていることにショックを受けた“彼女”は<スカートひるがえし>走り去って、彼も<アイツ追いかけて>出て行ってしまった。そして、わたしはひとり<茜さすワンルーム>に残された…のかもしれません。

高層 City きみも想像してみようよ
いつもキラキラかわいいネオンが光ってる
(でも何かが欠けてる)
高層 City きみも想像してみようよ
時を今すぐ止めて ここへ来て

高層 City 高層 City 高層 City
この街はたぶん 高層 City 空想都市
高層 City この街はたぶん
想像して 耳を塞いで
高層 City 空想都市
「ドロップキック・ミッドタウン」/sympathy
 
 ただ、どんな解釈にしろ、大切だった恋を失ってしまったことだけは明らかなヒロイン。そんな<わたし>は<今夜この街おさらばね>と、今いるところやこの最悪な状況を脱出するため“ドロップキック”でキラキラした世界へ突き抜けようとしているようです。一見、イヤなことを忘れるためヤケになっているようにも感じますが、それでも、脳内でずっと“あの日”が<グルグルいつも回っている>よりはマシである気がしますね。

海辺のカフェ イカれた心臓
点滅する景色
息をするようにあの日のこと 一瞬で蘇る

ひどい裏切りがいつまでも許せない
飲みたくない珈琲買って帰りを待ったわ
煙草の銘柄 あの日のことば忘れない
きみは子供だねって偉そうに言った

「あなたって強いのね」
いつだって帰りを待ったわ
ずっと一緒にいようなんて ねえ うそつき
「海辺のカフェ」/sympathy

 ちなみに、アルバムにはこのような新曲も収録されております。<息をするようにあの日のこと 一瞬で蘇る>、<ひどい裏切りがいつまでも許せない>、<飲みたくない珈琲>、<あの日のことば忘れない>…どこか「ドロップキック・ミッドタウン」の物語を思い出すようなワードが多々登場しますね。また<愛せども 東京 憎めども そこは東京>というフレーズも。なんだか「海辺のカフェ」は、あの夜にキラキラした世界へ抜け出そうとした「ドロップキック・ミッドタウン」のヒロインのその後の日常であるように思えてきました…。
 
 と、このように、1曲のなかでも、収録曲を繋げてみても、いろんな物語を想像して楽しめるアルバムがsympathyの『海鳴りと絶景』なんです。是非、歌詞を読みながら彼女たちのサウンド、歌声を堪能してみてください♪

◆メジャーデビューアルバム『海鳴りと絶景』
2017年2月22日発売
VICL-64719 ¥1,800+tax

<収録曲>
1.泣いちゃった(4人ver.)
2.ドロップキック・ミッドタウン
3.深海
4.海辺のカフェ
5.SNS
6.二十路
7.魔法が使えたら