パノラマ

日付け変わって君と二人
自転車一つに またがった
少し眠たそうな君の顔
草木も眠れぬ熱帯夜
“あのゴルフ場を曲がるんだ”
君はデクレシェンドな相づちで
うなだれてあたる小さな胸が
僕の頬と ペダリングを緩めた

いつだって僕は前だけを向いて
夜明けばかり気にしてた
だけど背中にしょった夢
ずっと見ていたくて振り向いた

君を連れ出してどうしても
見せたいモノがある
あの角を曲がったパノラマに
全部あると思っていた
目で見るよりも確かなもの
こんなに傍で眠っていた
この夜がいつまでも
途切れないように
僕はそっとまた ブレーキを握るよ
君を乗せて ゆっくりと

今夜三日月を見上げ
自転車一つにまたがった
ぼやけてしまった思い出を
どうにか形に残そうとしたんだ
あの日君と見渡した世界とは
全く別の景色だった
場所も時間も空の匂いも
全部あの日と同じはずなのに

「ちっぽけだね」何気なく「そうだね」…
あの時「そんなことない」なんて言っていれば
今も同じ景色が そこに見えていたのかなあ

君を連れ出してどうしても
知りたいコトがある
暗く濁ってしまったパノラマに
光が射すと思ってた
手を伸ばしても届かない 遠くの星は
光っていた 何も知らないでいた
あの時よりも輝きを増して
僕の脳裏に
焼き付いてしまっているんだよ

伸びた草木
加速してゆく熱帯夜
今はもうない景色の中
そっと目を閉じて君を想う
君を連れ出した僕の
まぶたの裏側には
もう見えないと思っていた
あの日のパノラマがあったんだ

いつだって僕は目の前ばかり気にして
大事なものを見失ってた
だから灯りが消えそうな時
いつだって目を閉じるんだ

キミを連れ出してどうしても
見せたいモノがある
あの角を曲がったパノラマに
全部あるとわかったから
目で見るよりも確かなもの
こんなに傍で眠っていた
この夜がいつまでも
途切れないように僕はそっとまた
ブレーキを握るよ
キミを乗せて ゆっくりと
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