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LIVE REPORT

Shout it Out

【Shout it Out】 『虎の威を借り、狩られる狐~Season 2~』 2017年9月8日 at 新宿LOFT

2017年09月08日
@新宿LOFT

Shout it Outが格上の先輩バンドに対バンを挑み、鼻を折られることで初心を思い返して成長しようという2マンライヴツアーの第二弾。その東京編の“虎”は、Aqua Timez。この日もMCで言っていたように山内彰馬(Vo&Gu)と細川千弘(Dr)が小学生の時から聴き続け、いまだにカラオケで歌っているバンドだそうだ。ふたりの小学校時代のヒーロー。初心を思い返すという意味では、これほど相応しい対バンはいなかった。

これまで多くの“虎”たちがステージに上がったら、先輩も後輩もないと言わんばかりに本気で“狐”(=Shout it Out)を狩ろうとしてきた中、Aqua Timezはその度量の大きさで、血気盛んな後輩バンドを受け止めるように伸びやかな歌をじっくりと聴かせながら、客席をじわじわと盛り上げていった。

彼らがこの日演奏した「千の夜をこえて」に対して、自分たちのライヴ中、“俺のために演奏してくれたと受け取りました”と山内が感激しながら言ったのは、「千の夜をこえて」を演奏する前に“彰馬が最初に買ったCD”とAqua Timezの太志(Vo)が前置きしたからだが、その「千の夜をこえて」をはじめ、Aqua Timezは新旧の代表曲の数々を1時間にわたって披露。

“青くて激しい音楽を演奏し続けてほしい。俺たちも一緒に走っていくぜ!”と太志がShout it Outにエールを送ると、バンドはエレクトロなビートを交えた激しいラップナンバー「Fly Fish」からアップテンポのロックナンバーを畳み掛け、一気に駆け抜けた。

その熱気を受け取ったShout it Outは1曲目の「光の唄」でいきなりスタートダッシュ。腹を括ったのか、以前よりも肝が据わってきたのか。伸び盛りの若いバンドだけにライヴを観るたび、その成長ぶりに驚かされてきたが、精神面においてメンバーたちの中で大きな変化があったことは、バンドの熱演に観客が拳を掲げながら応えた序盤の4曲からはっきりと伝わってきた。

小学生の頃に聴いていたAqua Timezの「決意の朝に」「千の夜をこえて」に、いかに影響されたかその思い出を語ってから演奏したのは細川の軽快なドラムが印象的な「夜間飛行」。そこからの中盤は、演奏のテンポを絶妙に変えながら、猪突猛進だけではない持ち曲の幅をアピール。同時に「列車」ではサポートのふたりも含め、格段に一体感を増したバンドの姿も観せつけた。特に間奏のジャムセッション風の展開は、怒涛という表現が相応しい白熱した演奏に度肝を抜かれた。そんな演奏に刺激されたのか、山内の歌声もいつも以上に伸びていた。

テンポをぐっと落として「トワイライト」「エンドロール」の2曲をじっくり聴かせ、そこからShout it Outの持ち曲中、最もパンクな「大人になれない」につなげる急転回も見事のひと言。荒々しい山内のべらんめぇ調のヴォーカルも曲の雰囲気にはまっていた。

“テレビで見たり、CDで聴いたりしていた人達と共演できるなんて夢のような話で、ふだん滅多にそういうことは思わないけど、バンドを続けてきてよかったです”。この日の感慨を、そんなふうに語った山内は“とんでもないことが実現したんだと奥歯を噛み締めながら残りの曲をやりたいと思います!”と続けると、前述した太志のエールに応えるように序盤以上の勢いでアンコールの「灯火」を含め計4曲を畳み掛けるように演奏した。山内が言う“とんでもないこと”は、バンドにとって大きな刺激になったはずだ。この経験がShout it Outの今後にどんな影響を与えるのか今から楽しみだ。

撮影:南風子/取材:山口智男

Shout it Out

シャウト・イット・アウト:2012年4月、高校の軽音楽部のメンバーで結成。地元である大阪府堺市を拠点に活動中。15年の『未確認フェスティバル2015』では3,254組の中からグランプリを獲得。12月にタワーレコード内のインディーズレーベル“Eggs”からタワーレコード限定ミニアルバム『Teenage』、16年3月には初の全国盤となる4曲入りEP『僕たちが歌う明日のこと』をリリース。7月6日、シングル「青春のすべて」でメジャーデビュー。同年9月にメンバーの脱退があり、山内と細川の2人体制となった。