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LIVE REPORT

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【lynch.】 『TOUR'17「THE SINNER STRIKES BACK」』 2017年8月11日 at 日比谷野外大音楽堂

2017年08月11日
@日比谷野外大音楽堂

文字通りの復活を宣言する作品が『SINNERS-EP』、さらには同作を引っ提げた全国ツアーのタイトルが“THE SINNER STRIKES BACK”。lynch.は自らが負った傷を改めて刻み込むことで、新たな歴史を歩み始めた。その自虐的とも捉えられる行為が、彼らの覚悟の言明であったことは言うまでもない。27本を数えた国内転戦のファイナルに選ばれた会場は、東京・日比谷野外大音楽堂。チケットは完売となり、急遽、機材席を開放しての当日券が販売されるほどだった。活動再開の場となった東京・新木場スタジオコースト公演(2017年4月18日)を超える動員につながったのは、何よりも各地で強烈なパフォーマンスを繰り返してきたからこそだろう。

lynch.のあるべき姿は、この日も明らかだった。葉月(Vo)、玲央(Gu)、悠介(Gu)、晁直(Dr)、そして今春からともにステージを作り上げてきた人時、Ryo(defspiral)、天野攸紀、Natsuki(元DuelJewel)という4人のサポート・ベーシスト。変則的な編成ながら、そこに妙な違和感はない。むしろ、lynch.の魅力はライヴにおいてより発揮されるという、これまで同様の事実を、「EVOKE」に始まった序盤の5曲だけで当たり前のように叩き付けてくる。中盤には奇跡的な現象もあった。葉月が亡き友人に捧げた「KALEIDO」をエモーショナルに歌い上げているさなか、その情感を後押しするかのように雨がポツリポツリと降り始めたのである。じっくりと聴かせ、その後の余韻も堪能させる手腕はlynch.の特性のひとつだが、アルバム『AVANTGARDE』からの「UNELMA」、脱退した明徳(Ba)の心情に思いを馳せた「SORROW」へと続くこのセクションは、なおさら特別なものに感じられた。後半は勢いよく駆け抜けていく構成。観客の声も大きく、開演時からは気温も下がりつつあったが、確実に場内の温度は高まっている。“いろいろあったけど、もう絶対に止まらねぇから! そんな約束の歌”(葉月)と最後にコールされたのは「TRIGGER」。新作の実質的なオープニングトラックをこの位置に配したことで、結果的に彼らの未来への希求が重みをもって響いた気がしてならない。

二度のアンコールが行なわれる前には、2018年3月11日に千葉・幕張メッセ国際展示場において、結成13周年記念公演『13th ANNIVERSARY -Xlll GALLOWS-』が決定したことが発表になった。“この夢みたいな現実は、いつでも起こせます。そう、lynch.ならね!”と言い放った葉月を始め、この“野音”で目にした壮観たる光景は、メンバーそれぞれが自信を深める要素となった違いない。13階段を上る新たな審判の日に向けた、lynch.の躍進に大いに期待したい。

撮影:江隈麗志/取材:土屋京輔

lynch.

リンチ:2004年8月、葉月と玲央と晁直の3人で結成。同年12月よりライヴ活動をスタートさせ、06年に悠介、10年に明徳が加入し現在の5人となり、6年にわたるインディーズでの活動にも終止符を打つ。11年6月、アルバム『I BELIEVE IN ME』でメジャー進出。その後もコンスタントに作品を発表し、ライヴ活動を続けるが、16年にメンバー脱退により活動を自粛。17年4月の新木場STUDIO COASTでのライヴで活動を再開し、同年5月に5人のゲストベーシストを迎えたEP『SINNERS-EP』を発表する。