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LIVE REPORT

LACCO TOWER

【LACCO TOWER】 『LACCO TOWER結成15周年特別企画「黒白歌合戦」』 2017年7月17日 at 恵比寿LIQUIDROOM

2017年07月17日
@恵比寿LIQUIDROOM

今年で5回目となる周年イベントは、さすがに結成15周年という節目を自覚した今のLACCO TOWER、そしてロックバンドとして無二のスタンスを持つ彼らならではの構成と内容で終始した。

というのも、イベントタイトルにもあるように“黒”と“白”に楽曲を振り分け、前半の曰く“白の部”ではテンポはミディアムメイン、コードで言えばメジャーキーのナンバーのみで構成(しかも1曲目は久々の「白」!)。意識せずともJ-POPのメロディーメーカー、歌モノを支えるアレンジが自在にできる楽器隊のスキルにハッとする。真一ジェットの鍵盤、松川ケイスケ(Vo)の日本語表現の深みが、リアルタイムで更新されていくさまをじっくり聴かせた。一歩間違えれば名曲=美談、ポジティブ、つまりフラットすぎて退屈しそうなものだが、LACCO TOWERはむしろメジャーキーの曲で切なさが増幅される。それにしても特別なことをしたいという松川の意向でメンバー全員浴衣着用だったのだが、登場した瞬間こそ少し笑ったものの、演奏が始まればまったく違和感なし。楽曲の世界観との符号もあるが、彼らの姿勢が中途半端なものだったらとても成立しなかっただろう。むしろ、和装で「傘」や「蛍」を丁寧に歌う松川には心を揺さ振られたぐらいだ。

転換時にはLACCO TOWERと同じく、今年結成15周年を迎えるNorthern19、MERRYのガラ(Vo)、NUBO、四星球、アルカラからのお祝いメッセージも流され、近いキャリアの面々も安易にひとつのジャンルに括れないことに妙に腹落ち感が。

後半の“黒の部”はひと言で言えば彼らのレパートリーの中でもマイナーキー、アグレッシブ、ハードかつエクストリームな楽曲のオンパレード。こんなにガレージよりだっけ?と驚く「蛹」、塩崎啓示(Ba)の鋼の振動が増幅される「奇々怪界」、狂気をはらんだライティングも脳みそをかき混ぜる「模細工」、ファストな重田雅俊(Dr)のブラストビート、食い気味に入る細川大介(Gu)のギターソロまで一気に畳み掛けた序盤。ステージ上もフロアーもぶっ壊れそうな熱量だった。ただ、LACCO TOWERの場合、その狂騒の中にあっても、松川が描く切なさや自己嫌悪、それらに対する赦しや解放も明確に伝わる。それが今回、曲調をきっぱり分けて展開したことから得た確信でもあった。テクノテイストな「少女」では真一ジェットがショルキーでフロアーのカウンターに移動、ファンを煽り、会場の参加感も増幅。そして、作品としての求心力の高さを誇る「秘密」「怪人一面相」で本編終了。黒も白も飲み込んだ上で、現在進行形の新曲「遥」をアンコールのラストに配置したことで、彼らなりのブレイブストーリー(この曲は「薄紅」に続く2度目の『ドラゴンボール超』ED主題歌)の意義もよりリアルに届いたのだった。

それにしてもバラードで涙する女性もいれば、ハードな曲でモッシュする少年もいて、しかもファン層も恐ろしく広い。容易な道のりではなかった彼らだが、今、まさに蓄積したポテンシャルが結実しつつあるのは間違いない。

撮影:鈴木公平/取材:石角友香

LACCO TOWER

ラッコタワー:日本語の美しさを叙情的リリックで表現し、どこか懐かしく切なくさせるメロディー、またその世界とは裏腹な激情的ライヴパフォーマンスで、自ら“狂想演奏家”と名乗り活動。2014&15年とバンド主催によるロックフェス『I ROCKS』を地元・群馬音楽センターにて成功させる。復活したレーベル『TRIAD』の、新人第一弾アーティストとして、6月にアルバム『非幸福論』でメジャーデビューを果たした。