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LIVE REPORT

TOC

『TOC LIVE TOUR 2017 過呼吸~アンコール~』

2017年03月03日
@恵比寿LIQUID ROOM

ソロ活動のTOCとHilcrhymeのTOCとではそれぞれにコンセプトは異なるだろうが、それは氣志團の綾小路翔とDJ OZMAとのような、キャラクターのドラスティックな変化ではなく、ユニットとソロがシームレスにつながっているように見えるのは私だけではなかろう。そして、そこが何ともTOCらしいところであると思う。ソロではHilcrhymeに比べてメロディアスさが鳴りを潜め、ハードなラップスタイルが前面に出た印象ではあると言われているし、それは確かに一理ある。だが、これ見よがしな印象はない。例えば、「BirthDay」や「Ray」。ともにラップは高速で、トラックのエッジも立っているが、決してキャッチーなメロディーがないわけでもないし、十分にポップでもある。2ndアルバム『SAFARI PARK』のジャケ写でトレードマークのサングラスを外したものの、その後のアー写、ライヴでは着用していることからビジュアルもほとんど変わらない。

つまり、少なくとも彼自身には、本体への倦怠感からのソロへの活路...といったようなネガティブな意識は間違いなくゼロであろう。独りになることであらゆる局面でタフさが要求されるわけだが、そうした場所に身を置くことで、積極的に経験値を積もうとしたのではないかと推測する。また、それはラッパー、ミュージシャンとしてのみならず、レーベル“DRESS RECORDS”を立ち上げ、そのヘッドに就任したことでも分かる通り、プロデューサー的観点を磨いていくための修練の場という側面もあるのだろう。

この日のライヴを観て、その推測がずばり的中した...というつもりもないが、そう的外れでもないとは思った。オープニングアクトを飾ったのは“DRESS RECORDS”の第二弾アーティスト、弘Jr.。“新・昭和風”と称されるソウルフルな歌声、実直なMCで会場を温めていく。披露されたのはわずか4曲であったが、彼のハートやスピリッツは充分に伝わってきたし、こういうスタイルのアーティストが加わったことで“DRESS RECORDS”というレーベルのカラーも見えてきた印象だ。弘Jr.本人の言葉で、彼自身が5月31日にメジャーデビューすることも発表された。こちらも期待したいところである。

弘Jr.に次いで、いよいよTOCの登場。スモークの中、花束を抱えてステージへ。黒いMA-1に赤い花。殊更に強いナルシシズムを売りにしているアーティストではないと思うが、こういうことをやらせると本当に上手いし、よく似合う。そこで披露されたのは「過呼吸」。パッと場内の空気を一変させる存在感と演出は流石である。間を空けずにヘヴィ&ワイルドな「Bird」とロックな「JIMOTO」とを畳み掛ける。“俺だけでいいですか? 人生、俺だけでいいですか? 始めましょう、TOCだけの宴を!”とのMCのあとに、インディーズデビュー曲「BirthDay」を持ってくるというのも洒落ていて、とても良かった。前半だけでもTOCの貫禄を感じるステージであった。

5曲目「2FACE」での演出はこのツアーでのハイライトであっただろう。“日本で一番TOCを愛している人”を客席から募ってステージに上げ、その人のためだけに歌うという大胆なパフォーマンスだ。この日はステージ正面にいたオーディエンスが選ばれて、白い椅子に座ってTOCの歌を聴いていた(後半はTOCに後ろから抱きしめられていたが、あの子、失禁とかしなかったのだろうか?)。このシーンを観て、昨年末の『Hilcrhyme 10th Anniversary TOUR 2016 BEST10』@TOKYO DOME CITY HALLを思い出した。あの時のTOCはアンコールの「クサイセリフ」で最前列の女性の頭部を抱えてその人に向かって歌い続けていたが、「2FACE」でのパフォーマンスはそのアップデイト版と見れなくもない。まさにユニットとソロとのシームレスなつながりである。

以降、“ラップとはこうやるんだと”と自らを鼓舞しながら披露した「ミスターキャッチー」や「CUT'S IN THE KITCHEN」といった誰の耳にも高度なスキルが分かる高速ラップを展開。開放的なメロディーを持つ「DISOBEY」でオーディエンス全員とジャンプしたあとは、ポップチューン「Ray」を挟んで、ゆったりとした8ビートでフロアを揺らす「TSUMETAI-NICHIYOBI」「PEEKABOO」「JENGA」と、緩急の付け方も堂に入ったものだ。ラストは“いつもみなさんの心の中にTOCがありますように”と前置きして「HATE」。心地良くも前のめりなビートに確かなラップが乗ったナンバーで本編を締め括った。

アンコールは、まず、弘Jr.を呼び込んでの「SIZE feat. 弘Jr.」。レーベルヘッドとしてしっかりと第二弾アーティストを紹介したつつ、「Shepherd」「過呼吸」でフィナーレを迎えた。「過呼吸」の前、ここまでのソロの道程を振り返って、 “今日が始まりの日”と言い、さらに“身命を賭してみなさんとつながりたい”とまでTOCは言った。彼がとても熱い男であることが分かる言葉である。ソロ活動においてTOCがアーティストとしてタフになればHilcrhymeの骨子がさらに強くなるだろうし、そうなればTOCのソロ活動がまた活性化されるであろう。そうしたポジティブなルーティンがしっかりと動いていることも分かる今回のツアーであった。クラッチは確実につながっている。

SET LIST

試聴はライブ音源ではありません。

  1. 3

    JIMOTO

  2. 6

    Daydream

  3. 7

    ミスターキャッチー

  4. 8

    I'm coming out

  5. 9

    X9X

  6. 10

    CUT'S IN THE KITCHEN

  7. 11

    DISOBEY

  8. 14

    TSUMETAI-NICHIYOBI

  9. 16

    JENGA

  10. 17

    HATE

  11. <ENCORE>

  12. 18

    SIZE feat. 弘Jr.