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LIVE REPORT

lynch.、SuG、vistlip OA)The THIRTEEN

『LSV』

2016年08月30日
@TSUTAYA O-EAST

90年代前半、“L.S.B”という名の歴史的イベントがあった。LUNA SEA、SOFT BALLET、BUCK-TICKと、現在の音楽シーンにも多大なる影響を与えた3アーティストが集ったツアーで、各地のゲストにTHE YELLOW MONKEY、L’Arc~en~Ciel、THE MAD CAPSULE MARKETS、DIE IN CRISEが名を連ねたと聞けば、どれだけ“すごい”イベントであったのかは推して知るべし。そんな伝説に敬意を表し、よく似た名前のツアーが、この夏、全国を賑わした。

lynch.、SuG、vistlip...その頭文字をとって“LSV”。7月よりスタートして全国7都市を巡ったこの3マンツアーも、その個性バラバラなラインナップといい、各バンドの覚悟に満ちたパフォーマンスといい、“L.S.B.”に負けず劣らず野心的なものであったことは、ツアーファイナルを観れば明らかだった。その幕開けを飾ったファイナル公演のみ参加のオープニングゲスト・The THIRTEENも、昨年9月に活動休止したSadieの真緒(Vo)と美月(Gu)によって今春始動したユニットゆえ、新人ながら3バンドとは旧知の仲。いきなりの咆哮で火蓋が切られたそのステージは、“30分ノンストップで全員かかってこい!”という言葉通り、パンキッシュで即効性の高いライヴチューンを投下し続け、初聴きのオーディエンスをもグイグイと熱狂の渦に巻き込んでいく。中でも9月28日発売の新曲「LIAR.LIAR.」は手拍子にヘドバン、拳、合唱と、ありとあらゆるライヴの美味しいトコ取りしたナンバーで、《嘘ツイタラ針千本飲マス》《指切ッタ!》という大胆なコール&レスポンスはインパクト絶大。さらにヘヴィ極まる「Abnormal Bullets」では、Sadieの頃から数多く対バンしてきたlynch.の葉月(Vo)がパーカー姿で乱入し、真緒とシャウトバトルを繰り広げる一幕まで! “ともに歩んできた仲間のバンドと、こうやって再会できたことを嬉しく思います。共に未来に向かって歩いてくれるかい!?”と、ラストナンバー「KILLER MAY」で新たなる始まりへの決意と覚悟を示す彼らに、フロアの拳も一斉に振り上がって感動的な一体感を作り上げた。

続くSuGは手拍子とヘッドバンギングが同居する「MISSING」からダブステップな「sweeToxic」と、バンドサウンドとクラブミュージックを融合させた独自のミクスチャーロックで、洗練されたステージを展開。その中心たる武瑠(Vo)は役者にデザイナーと多方面で活躍しているだけあり、オーディエンスへのアピール力も群を抜いていて、些細な仕草や目線だけで観る者を釘付けにしてしまう。しかし、その根本にあるのは、清々しいほどの“楽しんだ者勝ち”精神。「無限Styles」ではタオルを振りたくるフロアーに“一番バカみたいに楽しんでる奴の勝ちだ!”と煽り、途中ヴォーカルを取るyuji(Gu)もイキイキと弾けまくるのが微笑ましい。“このツアーで人と戦うことの楽しさを改めて知りました。ここにいる全員、ひとり残らず惚れさせて帰りたいと思います!”と続けた「SICK’S」も、軽快でスタイリッシュなサウンドでいて、実は病んだ現代人への警鐘を鳴らすナンバー。音楽/アートワーク/映像と関わる作品全てに発揮されるセンスの良さ、シンプルに楽しさを追求したステージ、雑多なジャンルを飲み込んで時代を映した洗練された楽曲、そして深いメッセージ性と、SuGというバンドには一筋縄ではいかない多面的な魅力があふれているのだ。切れ味鋭いダンスビートに心も躍る「HELLYEAH」から、“来年の結成10周年、日本武道館に立つことを決めました”と改めて報告して最後に贈ったのは「Smells Like Virgin Spirit」。大いなる挑戦を決め、音楽への想いを籠めたナンバーをエモーショナルに放つ5人の覚悟に、さらに“超簡単だよ。楽しむだけだ、歌え!”という武瑠の声に心揺り動かされた客席からは、熱い大合唱が沸き上がった。

“もっと響かせてこいよ!”と人気曲「SINDRA」で幕開けて、終始“攻め”の一点突破なライヴを繰り広げたのはvistlip。続いてYuh(Gu)がフライングVを唸らせる「My second B-day」に、彼のテクニカルなギターソロから智(Vo)と海(Gu)がラップを掛け合う「Imitation Gold」等、ゴリゴリのアッパーチューンを休みなく畳みかけてゆく。しかし、いずれもサビでは美しいメロディーが開けてポジティブな情景を描くのがvistlip流。さらに、そんな広がりのあるサウンドスケープをバックに、楽器陣が飛び抜けて派手なパフォーマンスでカオスな世界を作り上げていくのが興味深い。例えば瑠伊(Ba)はほとんど定位置に留まることなく舞い踊り、ドラム台から動けないはずのTohya(Dr)でさえも、激烈なドラミングで絶えず自身の存在を主張してくるのだから驚きだ。全国を同一バンドで回ったツアーでの智の泣き笑いなエピソードを挟み、スラップベースでフロアがモッシュする「Which-Hunt」、お馴染みのギターリフからヘッドバンギングの嵐が吹き荒れ、Yuhのライトハンド奏法に海のラップと彼らの武器を詰め込んだライヴ定番曲「GLOSTER IMAGE」と、後半戦でも盛り上がり必至のアグレッシブチューンを次々ドロップ。あえてひとつの方向にベクトルを絞ったメニューは、手強いライバルたちとの共演だからこそ、真正面から挑んでいこうという5人の意気込みの表れに違いない。“ちょっと変な踊りを”という智の言葉に応え、ファンがツイスト風の動きを見せる「HEART ch.」に、ラストの「LION HEART」ではステージ上の音も動きもオーディエンスと共に狂乱! その真っ直ぐな姿勢や潔し。

そして、今年で結成12年と3バンドの中でも最長キャリアのlynch.が大トリに登場。イントロのピアノ音だけで場内が沸いた「LAST NITE」をアクションもなく、定位置でクールに奏でる5人に、それでも満場の腕があがるのは滲み出る貫禄と、届けられる音自体に比類ない説得力があるからだ。かと思いきや、速やかにフロント陣が進み出て一列に並び、ド定番のアッパーチューン「I’m sick,b’cuz luv u.」を2曲目に放った瞬間の沸騰ぶりときたら! さらに明徳(Ba)がグイと前に出て、玲央と悠介のギター隊が左右にスイッチする「ALL THIS I’LL GIVE YOU」と続き、拳とヘッドバンギングの海となるフロアの一体感は凄まじいのひと言。押し引きの妙を熟知したニクい展開に思わず唸るが、真に驚くべきは晁直(Dr)のタイトなドラミングを筆頭に、エモーショナルな流れにも全くブレることのない演奏と、オーディエンスの熱を引き上げる葉月の自然体で堂々たるパフォーマンスである。そうして衝動と激情を的確にコントロールする彼らの懐の広さには毎度脱帽するほかないのに、次の瞬間には“あ、僕ら怖くないんで。一番かわいいから安心してください”と気の抜けるようなMCをしてみせる、その飴と鞭の見事な使い分けもズルい。9月14日発売のニューアルバム『AVANTGARDE』より、まさにアバンギャルドな構成の「F.A.K.E.」に、“とにかく暴れる曲!”な「THE OUTRAGE SEXUALITY」も披露されたが、これまたリリース前とは思えぬ抜群のノリに。そこから雪崩込んだ「MIRRORS」では麗しいメロディーと疾走するビートが絶妙の高次元融合を果たして、これぞlynch.!と高揚感をかき立てられる。さらに“SEXしようぜ!”の声に客席から“ヤリタイ!”のコールが湧いて、玲央がギターネックを舐め上げる「pulse_」に、ファンとの絆を歌った「ADORE」では全員でサビを大合唱。共に叫び謡う声に、lynch.というバンドが貫いてきた心意気と、12年で積み上げてきたものの大きさを痛感させられたステージだった。

アンコールでは葉月が、同じビジュアル系とはいえまったくタイプの異なる“異種格闘技”なツアーで心配はあったにもかかわらず、全員が楽しんでやれたこと。“毛色の違いを気にせず、またぜひやっていきたい”と嬉しいMCを。おまけに“楽屋のみなさん、入ってきたかったら入ってきていいよ!”と「GALLOWS」を演奏しながら、悠介が袖にいた美月を引っ張り出したのを始まりに真緒やChiyu(SuG/Ba)、続く「EVOKE」でも出演バンドのメンバーが次々ステージに現れる。なんと武瑠が葉月の頬にキスをすれば、yujiがShinpei(SuG/Dr)とハシャいでいたり、そんな仲間たちの姿をTohyaが写メに収めまくっていたり、気が付くと海やmasato(SuG/Gu)が演奏していたりと、微笑ましい場面があちこちに出現して目が足りない。また、葉月が感慨深げに発した言葉に、きっと誰もが全力で頷いたことだろう。
“バンドっていいな! ライヴっていいな! これから先、ここにいる全員が武道館できるように頑張るんで、ついてきてくださいね。またやりましょう!”
バンドシーンを自分たちだけでなく、みんなで力を合わせて盛り上げていきたい。そして、音楽の喜びを多くの人々に伝えたい――。そんな彼らの野望はファンと仲間たちとの絆のもと、着実にかたちになっていくだろう。

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