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LIVE REPORT

吉澤嘉代子

『絶景ツアー “夢をみているのよ”』

2016年04月30日
@東京国際フォーラム ホールC

これが少女期を卒業した、大人への第一歩。アルバム『東京絶景』の世界を表現するツアーの最終日は、初となるホール公演だ。新生活の始まりを暗示する段ボール箱のセットや、少女時代の愛犬ウィンディの台詞(吉澤嘉代子の二役)など、序盤から物語形式でぐいぐい引き込む。バンドも鉄壁で、フォークロック調の「ひゅー」、ダンスビートの「綺麗」、カントリー風の「ガリ」など多彩な曲調を豊かに彩る、温もりある楽器音が心地良い。「ガリ」では恒例の観客席突入、「手品」では小さな女の子をステージに上げて紙テープの手品をお手伝いさせたり、1曲たりとも飽きさせない演出でライヴは快調に進む。曲間にナレーション形式で進行する“ひとり暮らしを始めた嘉代子とバイト先の店長の恋”は残念な結果に終わるものの、怒りを込めたハードロック「化粧落とし」や、ひとり多重コーラスによる「野暮」など、音と心を重ねて届ける上手さはさすが。後半の名バラード「泣き虫ジュゴン」、そしてアルバムのテーマを象徴する「movie」と、心の支えだったウィンディが去り、独り立ちしてゆく少女の決意が「東京絶景」でクライマックスを迎えた時の感動を、何と表現したらいいか。ただただ素晴らしいのひと言以外に言葉がない。そして、完成度の高い本編とは対照的に、アンコールはゆるめに。未音源化曲「残ってる」と「未成年の主張」、予定になかった「ケケケ」をもう一回やってジ・エンド。音楽、物語、演劇、人間...全てが絡まって生み出す嘉代子ワールドの神髄、ここに極まれり。一生、付いていきます。