月9ドラマ主題歌も担当の“ヒゲダン”転機の2018年!

 2018年4月11日に“Official髭男dism”が1st FULL ALBUM『エスカパレード』をリリース!バンド名には【髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けて行きたい】という意思が込められている、通称:ヒゲダン。「楽しすぎるライブ」「バツグンの歌唱力」「心に残る楽曲力」三拍子そろったその魅力に迫りました。また、アルバムの全収録曲が素晴らしく「お伺いしたいことが多すぎます!」と告げたところ、笑顔で「全部答えます!」と本当にノンストップで取材時間ギリギリまでブワーッと語ってくださったボーカル・藤原聡さん。1曲1曲に込められている想い、たっぷりみなさまにお届けします!

(取材・文 / 井出美緒)
115万キロのフィルム 作詞・作曲:藤原聡
これから歌う曲の内容は僕の頭の中のこと
主演はもちろん君で 僕は助演で監督でカメラマン
目の奥にあるフィルムで作る映画の話さ Ah
くだらないなと笑ったんなら掴みはそれで万事OK!
呆れていないでちょっと待って
きっと気に入ってもらえると思うな
ここまでのダイジェストを少しだけ見せるよ
もっと歌詞を見る
歌詞で心が失恋した当時にタイムスリップできた。

―― ヒゲダンのライブは何度も拝見しているのですが、とにかく楽しいですし、ファンの方もメンバーのみなさんも楽しそうですよねぇ!

本当にメンバーみんなライブ大好きで、良い顔していると思います!僕らは、島根県というまぁ田舎から出てきたわけですけど、その選択の先に“今”があって「こうして音楽が出来ているんだなぁ…」と実感できる貴重な時間でもありますし。あとお客さんの「待ってました!」って顔を見ると嬉しいし、それがヒゲダンの音楽のコンセプトである【誰もがワクワクするような音楽を】って想いに繋がっているんですよね。

―― とくにライブでは、聡さんのバツグンの歌唱力に圧倒されます。

photo_01です。

いやいやいやいや(笑)!バンド結成当初は「ヘタクソ」ってよく言われたし、バンド内外共に「ヒゲダンはちょっとボーカル頑張らなきゃね」みたいな雰囲気が結構あったんですよ。ただ、だからこそ「なにくそ!」と頑張れたところは大きくて。活動を重ねるにつれ、徐々にそう歌唱力を褒めていただけるようになってきたので、すごく感謝しています。だけど一方で、自分には慢心してしまう素質があると思っておりまして(笑)。それに飲み込まれるのは怖いので、歌唱力を磨くことを怠らないで、右肩上がりで歌い続けていきたいですね。

―― もともとはドラムをやっていて、ボーカルを始めたのは、大学でヒゲダンを結成してからだそうですね。昔はよく「ヘタクソ」と言われたとのことですが、中学高校の頃、カラオケなどで褒められたりしたのではないでしょうか。

あー、その頃はたしかに…。なんというか、高い声がただ金切り声みたいに出る時期でした(笑)。悪く言えば低音はまったく出ないわけですよ。だからまさにカラオケなんか行くと、マイケル・ジャクソンとかX JAPANとか歌っていましたね。あと高3のとき、ONE OK ROCKが「完全感覚Dreamer」って曲を出したんですけど、それからもうずっとワンオクのファンで。そういうハイトーンのボーカリストに憧れていたところはあります。だけど僕は今もまだまだなんですよねぇ。多分、歌唱力に満足できる日ってこないんじゃないかなぁ。「これで大丈夫」って思いたくないし、今のところ全く思える気配がないので、むしろそれは良いことだなって。その気持ちがある限り続けていけるんだろうなって思います。

―― また、聡さんは大学でヒゲダンを結成したものの、卒業後は地元の企業に就職されて、2年間営業マンをされていたんだとか。最初は「音楽で食っていこう!」という気持ちはありませんでしたか?

「食っていけたら…面白いかもなぁ」とは思っていましたけど、そこまで本気では考えていませんでしたね。というのも、僕は就職活動をして企業から内定をいただいたんですけど、その数週間後くらいに音楽業界の方々からちょっとずつ声がかかるようになってきたんですよ。正直「もう少し早く…!」なんてことを思わなかったわけでもありませんが…(笑)。ただ僕も、レコード会社の人が来てくれて「デビューできます。なので仕事を辞めて東京に出て音楽でやっていきますか?」と言われたとき、すぐに「はい」とは言えなかったんですよね。あまりに急だったし、どこまでやれるのかもわからなかったし…。

―― やっと就活を終えて内定が決まっているタイミングなだけに、より重大な決断ですよね。

そうそう。しかも当時、僕らは曲をネットで配信をしていて、それを都会の音楽業界の方々が見てくれて、声をかけてくれたわけじゃないですか。ということは、地元でやれることがまだあるとも思ったんですよ。だから「僕は土日祝日のみが仕事の休みなので、その範囲内で活動するペースでしばらくやっていきたい」というスタンスを伝えました。そうするとレコード会社の人はやっぱり「まぁ難しいよねぇ」となって。でもそんななか、今の事務所のスタッフは「働きながらでも全国デビューはできるよ」と言ってくれたので「じゃあ、やろうかな」と、スタートしまして。まぁ中学高校の頃はプロドラマーになりたいという夢があったので、それがボーカルという形で似た世界に引き戻されたことは、スピリチュアル的なものを感じるし、人生って本当に面白いなぁって思います。

―― ヒゲダン楽曲は「コーヒーとシロップ」や「What's Going On?」など、仕事でモヤモヤが溜まったときに聴くと鬱憤が晴れる歌も多いです。その歌詞にはやはり、聡さんが2年間のサラリーマン生活で抱いた感情なども反映されていますか?

おっしゃるとおりですね。結成当初はラブソングばっかり歌っていたんですよ。でも働くとちょっとずつ“ヘイト”が溜まっていくから(笑)。僕が「これどうなの?」って感じたこととか「こういうことで悩んでます」って体験とか、どちらかというとマイナスな感情を歌詞に入れることの意味に徐々に気づいていきました。それと同時に【みんなの人生に寄り添うような歌を作りたい】という音楽コンセプトも生まれましたし。ワクワクさせるだけではなく、現実と向き合ってそれを突破していく一押しが、僕らの音楽で出来たらって。あと、2016年に上京したんですけど、それはそれで見えてくるものが変わってきましたね。

―― どのように変わりました?

まず仕事を辞めて、安定を捨てたことによる期待と不安はありました。それから、こんなこと言っちゃうものあれなんですけど、やっぱり地元の島根よりも都会の人の方がちょっと…愛想がないんですよね(笑)。もちろん人によるし、たまたま僕がそういう人に出会いやすいだけかもしれないですよ!でも…運転していて道を譲ってもらって「ありがとう」って手を挙げても、無表情だったり。コンビニのおつりの渡し方がすごく雑だったり。結構「おい!」って思うことが多いわけですよ(笑)。だからこそ、そういう日常をどんどん歌詞にできるようになってきたと思います。最近はとくに、自分の体験や感情をスムーズに音楽へと消化できているような気がしますね。

―― ちなみに、とあるインタビューを拝読したら「もともとは歌詞をそんなに重視していなかった」とおっしゃっていて、それがとても意外でした。

そうなんですよー。やっぱり結成当初ですね。ラブソングばかりを歌ってはいたものの、歌詞への共感というものをあまり意識したことがありませんでした。でも変化のきっかけがありまして。僕は中学の頃“スキマスイッチ”とか“Mr.Children”をすごく聴いていたんですね。自分が失恋したときなんかとくに…。で、ヒゲダンの活動を始めて、ふとあの頃の曲を改めて聴いてみたんですよ。そうしたら、歌詞で心が失恋した当時にタイムスリップできたような感覚になることに気がついたんです。

―― わかります。音楽ってその曲を聴いていた時の自分の感情が刻まれていますよね。

本当に不思議な感覚でした。匂いみたいに本能的なところから記憶が蘇ってくるというか。なんか、自分が失恋で打ちひしがれていた時をドラマのワンシーンだとすると、その時に聴いていた曲は挿入歌みたいだなぁって。自分の人生の。そういう考え方をしたときに「あー、歌詞はもっともっと大事にしないと」と思いましたね。きっと今、僕たちの音楽を聴いてくれている中学生や高校生もいるだろうし、その人たちがそれぞれの時間を刻んでゆける曲を常に作っていきたいですね。かつ、みんなに「素晴らしい!」って思ってもらえる曲をどんどん更新してながら活動をしたいと思っております。

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