「何色にも染まれること」が強みに。愛がギュッと詰まった最新作!

 2018年2月21日に“家入レオ”がニューアルバム『TIME』をリリース!今作には、自作曲と提供曲がほぼ半々の割合で収録。10代でデビューしてから、様々な経験を積み重ねて“今”という時間にたどり着いた彼女は、若い頃のヒリヒリした強さとはまた異なる、しなやかで明るい強さをまとっておりました。現在の家入レオだからこそ伝えられる新曲たちの話、男女の話、恋の話、様々な想いをお楽しみください…!

(取材・文 / 井出美緒)
春風 作詞:SoichiroK 作曲:SoichiroK・Nozomu.S
君は 春風 ふわり 誰より憧れていた 面影(シルエット)
いまも瞳に きらり なつかしい情景(シーン) が巡る
春が来るたび ふわり 思い出す君がいた 物憂げな季節(シーズン)
風に吹かれ 消えた 恋のメモリー
もっと歌詞を見る
現在の“家入レオらしさ”はデビュー当初と真逆ですね。

―― 昨年の4月30日には夢の武道館ライブが叶いましたね!その時のMCでレオさんがおっしゃっていた「いろんなことを我慢して我慢して夢を叶えるんだとか、苦しいことを重ねて重ねて幸せを掴むんだとか、今ならなんか違うかもって思う。楽しいことをたくさん積み重ねて光を手にしたいって、22歳の私は感じている」という言葉がとても刺さりました。

あ~その想いは23歳の今も変わらないですね。デビュー当時って、本当に限られた場所でしか日々を送れていなかったから、とにかく余裕がなかったんです。10代でデビューして表に立つようになったので、同年代の子が普通にできるような許容範囲のことも、ちょっとでも危なそうなら躊躇しなきゃいけないという環境で。何かしたことで自分だけが怒られるんだったらまだ良いんですけど、周りの大人の方々に迷惑をかけてしまうから、やっぱり自由には動けませんでした。

―― たとえば、部活や文化祭、体育祭などもNGだったのでしょうか。

はい、音楽活動を優先していたので、学校行事はほぼ出てません。ただ、自分にとってのメインはずっと音楽だったので、そこに対する後悔は全く無いんです。一番しんどかったのは、18歳から20歳までの間なんですよね。高校の頃はまだ、学校で同世代の子と一緒にいる時間があったから良かったんですけど、私は上京組でこっちに友達もあまりいなくて。だから卒業後は、常にプロモーションでレコード会社の一室にいるか、スタジオや家で制作しているか、という毎日の繰り返しでした。その余白がない、というところが当時は苦しかったんだと思います。

―― 今年は、ももクロの有安杏果さんが「普通の女の子の生活を送りたい」と卒業発表をなさりましたが、レオさんはこれまでの活動の中で、そう考えたことはありませんでしたか?

「もうヤダ!」ってことはいっぱいありましたよ!でも多分、有安さんはもう自分のやりたいことをやりきったからこそ、そういう道を選ぶことが出来たんですよね。私はまだまだやりたいことがたくさんあるので「ツラいな」とか「イヤだな」が「辞めたい」に繋がったことはないかなぁ。今は、前よりずっと「楽しい」という気持ちが強くなっていて、そういうマインドで音楽をやれているから、ありがたいなぁと思います。

―― それこそ武道館MCでおっしゃっていた「楽しいことをたくさん積み重ねて光を手にしたい」ですね。

photo_01です。

そうです!そのデビュー当時の「我慢してしんどくて…」という頃に、こう…幽体離脱みたいに俯瞰してその出来事を見る感覚が根付いたんですよ。そうしたらだんだん「これヤバイ方向に進んでいるな」ってこともワクワクドキドキしながら見つめるようになっちゃって(笑)。今は苦しいことさえも味わい尽くしたいと思っています。いろんなことを自分のやりたいように出来るようになったからこそ、そういう楽しさを感じられるようになったんですかね。

―― ちなみにレオさんは、デビュー当初のインタビューで『家入レオらしさとは?』という質問に「“痛み”を“痛み”として叫ぶこと」だと答えてくださいました。今ならなんと答えますか?

現在の“家入レオらしさ”はデビュー当初にお答えしたことと真逆ですね。今は「何色にも染まれること」が私らしさかもしれない。前までは、自分から生まれたものだけが自分らしさだって、偏った見方をしていたんですよ。でもいろんなミュージシャンの方々とご一緒させていただくなかで変わりました。たとえば、今回のアルバム収録曲にあるような完全な提供作品には、自分のDNA的なものがない分、歌唱でどれだけ爪あとを残せるかが大切だと思ったんですね。そうしたら結果、自作曲以上に自分らしさが出ていたりもして。だから、どんな曲だって家入レオが歌えば「私は私なの!」って言える自信を持てるようになってきたんだと思います。

―― その変化はご自身の作詞にも表れているように感じます。今回のアルバム収録曲にはすごくいろんな物語、主人公の心情が描かれていますよね。

以前は、発信者としての視点しか持っていなくて、すごくガムシャラで、グレーって言っておけば良いところを白黒はっきりつけたがる、みたいなところがあり…。でも二十歳を過ぎて、一人の人間としても、アーティストとしても、女性としてもたくさんの経験をしていくなかで、もっといろんな視点を持てるようになって。だから、自分のちょっとした実体験を妄想で脚色して物語にする、というような作詞法も楽しめるようになりましたね。渋谷で思いっきり肩をぶつけられたのに「ごめんなさい」も言われなかった時のモヤモヤから、ブワーッと歌詞が生まれるときもあるし。フィクションもノンフィクションも両軸を楽しめるようになったんです。それを今回のアルバムで表現することができました。

―― また、初期の家入レオ楽曲のヒリヒリした感じも好きだったのですが、今作に収録されている、女性の可愛らしさやしなやかさが伝わってくる楽曲も素敵だなぁと。

嬉しい!多分、以前は三つくらいしか引き出しを持っていなくて、その一つに“ヒリヒリした私”がいたんですけど、今は引き出しの数が多くなっているんだと思います。“ヒリヒリした私”の引き出しもちゃんとあるけど、最近登場する割合が少なくなっているだけなんです。今はそのいろんな引き出しを開けてどう遊べるかってところが一番楽しいんですよね。それこそ「恋のはじまり」なんかもそうで。

―― 大原櫻子さんと藤原さくらさんとのコラボソングとして、レオさんが書き下ろしたラブソングですね。

私が大好きな、らこちゃんとさくらがどんなことを歌ったらファンの人たちは喜んでくれるかなぁってワクワクしながら作りました。もう「ここは絶対らこちゃん!」「このフレーズはさくらしかない!」って歌割りも自分の中で明確にあって(笑)。だって<好きで好きでしかたなくて>というピンク色な言葉はあの二人が歌うから良いじゃないですか!実際に、はじめて歌ってもらった時も衝撃で。あ~、やっぱりこの子達ってすごいんだなって改めて思いましたね。

―― とくに藤原さくらさんの<ちょっと無理してしたメイクは>の歌声がたまらないです。

そう~!あの声の裏返りが絶対に映えると思ったんです。ただ今回、レコード会社の方に「家入レオバージョンを収録したい」って言われた時は正直、迷って…。二人が歌ってくれるのを前提に作った曲で、私が一人で歌って果たして魅力って出るのかしら?って。だけどファンの方からも「レオちゃんだけで歌っているのも聴いてみたいなぁ」って声があったから、喜んでもらえるんだったらやるのが一番だ!ってリアレンジして収録しました。

―― そんな「恋のはじまり」も収録されている今回のアルバムタイトルは『TIME』ですが、どんな意味合いを込めたのでしょうか。

私、周りから「生き急いでる」とか「そんな焦らなくてもいいんじゃない?」とか言われることが多いんですよ。あと、いつもスタッフに「もう春!」「もう夏!」「もう秋!」って常に言っていたりとか(笑)。しかも今回のアルバムの曲が全部出揃ってみたら、偶然にもどの歌詞にも何かしら“時間”にまつわるワードが綴られていて。

―― たしかに<ずっと>、<今すぐに>、<逆襲の時間>、<パパの時計>などなど登場しますね…!

人より“時間”というものに敏感なんですよね。その理由は、私がショートスリーパーであることも関係しているのかなって。夏場だと睡眠時間が2時間あるかないかくらいが普通だったりもしますし。単純計算すると、他の人の1年が私にとっては1年3ヶ月~4ヶ月分で、それが5年重なるとかなり差が出てくるじゃないですか。だから時間軸のズレみたいなのもすごくあって、マネージャーさんに「あの案件どうなりました?1週間前に伝えましたよね?」ということが、実はまだ3日前だったりということもよくあります(笑)。

そういうことを考えているうちに「時間って人それぞれいろんな流れ方をするなぁ」とか「この作品は自分の日常の瞬間を切り取ったものなんだ」と、改めて感じたというところがまず『TIME』の由来ですね。あと、このアルバムを聴いてくれるということは、時間を私に預けてくれるということだと思うんですよ。みんな仕事に、恋に、友情に忙しくて、自分のために使える時間って意外と限られているじゃないですか。でもそんな時間をアルバム一枚分に託してくれるって、もう最上級の愛情表現で。だからこそ、その預けてくれた時間をより濃いものにして戻したいという気持ちもタイトルに繋がっています。



1 2 3 次のページ