7月18日からスタートする『Mr.Children Stadium Tour 2015 未完』。アルバムのリリースをツアーの最終日とした『REFLECTION』のツアーを経て、ここからは正真正銘、ニュー・アルバムを引っ提げてのものとなる。当然、アルバムのなかの新しい作品が披露されることだろう。その一方で、季節は夏。場所がドームやスタジアムということもあり、お祭り的な要素も加わった内容になるのかもしれない。通常ならセットリストを組む際に、そのツアーごとのコンセプトというのがあるが、お祭りとなれば別だ。縁日に出掛けていって綿菓子や金魚掬いがなかったら寂しいように、みんなが聴きたい定番の曲も、きっと用意されている………、可能性は高い。

 ここで改めて、Mr.Childrenのライヴの魅力について書いてみる。まず、ライヴといえど、彼らが作品主義であることは変らない。ただ盛り上がれば、というだけに終わらない、見終わったあと、心の中に残る何か…、家に戻るまで消えない何かが、きっとある。メッセージ、という言葉を使うと重たくなるけど、「さぁ明日も頑張ろう」という、そんな勇気を与えてくれるのがこのバンドのライヴなのだ。

 なぜ私達は「頑張ろう」と思えるのか? それは彼ら自身がパフォーマンスにおいて、全身全霊で頑張っているからなのである。特に『REFLECTION』以降は、虚飾のない、人間くさいバンド感を伝えることを目指し、既に多くの実績があることに胡座をかかず、筋肉から再び鍛え直している感がある。さて、どんな夏の想い出が心に焼き付くのか? まもなく開演である。

 真夏にスタジアムやドームで聴きたいMr.Childrenの名曲を、これから5作品紹介していこう。でも、最初にお断りしておくが、この文章はまなもくスタートする『Mr.Children Stadium Tour 2015 未完』で演奏されるであろう作品を予測するものではない。これまでの彼らの歴史のなかで、僕個人のライヴ体験も踏まえ、夏にこそ輝いてきた楽曲を紹介するのが目的である。
ミスターチルドレン

■所属事務所:エンジン
■所属レコード会社:トイズファクトリー

・桜井 和寿(さくらい かずとし)
担当:ボーカル&ギター
1970年3月8日生まれ 東京都出身 O型

・田原 健一(たはら けんいち)
担当:ギター
1969年9月24日生まれ 福岡県出身 O型

・中川 敬輔(なかがわ けいすけ)
担当:ベース
1969年8月26日生まれ 長崎県出身 A型

・鈴木 英哉(すずき ひでや)
担当:ドラムス
1969年11月14日生まれ 東京都出身 A型

同じ高校に通う桜井・田原・中川が中心となって「Mr.Children」を結成。ライブハウス「渋谷La.mama」を中心に活動し、小林武史をプロデューサーに迎えて、1992年5月10日にミニ・アルバム「EVERYTHING」でメジャーデビュー。93年頃から徐々に注目を集め、4thシングル「CROSS ROAD」でシングルとして初のミリオンセールスを達成。続く5thシングル「innocent world」は初登場1位を獲得、1994年の年間シングル・チャート1位に輝き、日本レコード大賞を受賞。その後も「Tomorrow never knows」や「名もなき詩」など、出す曲が次々と大ヒットを飛ばし、俗に「ミスチル現象」と呼ばれる黄金時代を築く。2015年現在も、トップアーティストとして君臨している。
 まずはここ最近の彼らのライヴでもっとも盛り上がるこの曲から。歌詞が実に斬新な構造だ。というのも、恋人同士がイヤホン(?)を分け合って同じ曲を聴いているかのような状況を描写していて、“オ〜・ロック・ミー・ベイビィ〜”という、ライヴでは観客がともに歌う箇所というのが、その実際に二人が聴いている音楽そのものにも思えるからなのだ。つまり歌のなかにもうひとつの歌が盛り込まれているというか…。さらにこの作品はもともとサッカー場で応援歌として一節が使われる「君の瞳に恋してる」のポップさに影響を受けたアレンジになっていて、当然それもライヴでの観客の好反応を導いている。みんなが気持ちをひとつにしやすいのだ。昨今、音楽においてアンセムという言葉をよく目にするが、正真正銘、その役割を果たせるのがこのMr.Childrenの「エソラ」だろう。
 さて次は個人的な思い出を書かせて頂く。あれはそう、『Concert Tour POP SAURUS 2001』の時のこと。鮮明に覚えている。この作品の歌詞の最初のほうに“Tシャツのなかを泳ぐ風”というフレーズがあるのだが、会場にいて、まさにその瞬間、袖口から風が渡りそんな現象が起こり、自分の身体が空に昇っていくかのような恍惚とした気分に包まれたものだった。広い会場でのライヴというと、お祭り的な楽しさや、広いがゆえ、なおさらの一体感が求められもするが、あくまでひとりひとりは「個」であるし、その原点に立ち返っての解放感を授けてくれるのがこの作品の良さだろう。
 そう書きつつも、現実的にドームや野外はだだっ広い。会場の隅々までをあたためる、そんなエナジーを放出する楽曲も必要である。というと想い出されるのが、この作品である。特にフロントマンである桜井は、身体能力の高さも駆使してパフォーマンスすることが多く、ニシエヒガシエだけでなくミナミヘキタヘと躍動する。さらにこの「ニシエヒガシエ」は、曲の長さや構成を様々に変化させることに適している。ライヴにおいて、非常に使い勝手のいい作品でもあるわけだ。
 お馴染み過ぎる作品だがライヴの定番・重要曲で在り続ける。特にスタジアムや野外といった場所では…。マイクを客席に向け、ワン・コーラスまるまるお客さんに歌ってもらう、ということも可能な作品。皆が知ってる歌だから出来ること。皆が知っているというのはとてつもなく偉大なことなのだ。まさに音楽をステージと客席で分け合う光景。頭上に降り注いでくるかのようなイメージのイントロのギターのフレーズは永遠だ。毎回これが響くと、それまでがリセットされ、まっさらなイノセントな気分で歌のなかに入っていけるのが不思議。
 最新アルバム『REFLECTION』収録作品だが、何年も前からライヴで演奏されていたかのような存在感を早くも示している。その先へ、さらにその先へと視界良好なのが夏にぴったりだ。そんな楽曲に“幻聴”というタイトルをつけるのは桜井独特のセンスだが、意味するものは日常生活におけるちょっとした啓示のようなもの。それを感じ取れるかで生きる喜びも変る。“切り札を隠し持っているように思わせてる”のあたりの歌詞表現は本当に天才的……最後は夏の歌の解説じゃなく単なる歌詞解説になってしまいスミマセン。
 Mr.Childrenの楽曲のなかで、歌ネットにおける歴代アクセス数第1位が「HANABI」なのだという。数字を見ると、2位の「Sign」をけっこう引き離している。この歌は、なぜこれほど注目を集めるのだろう。いい歌だから。もちろん大きな理由だろう。歌詞を検索するということの必要性でいうなら、比較的言葉が詰め込まれているタイプの曲であることも関係するのだろう。

今回、この原稿を書くために、改めて聴いてみた。もうイントロで泣きそうなほどに、歌詞だけじゃなく「音楽」として完璧だということを改めて想った。ちなみにギターの名フレーズとともに始まるこのアレンジは、この時期、桜井和寿がアコースティック・ギターを新調し、ジェームス・テイラーの名曲をコピーしたりして腕を磨いていたことの反映でもある。

水は空気と循環させないと死ぬ。それがヒントに…。

 先日終了した彼らの『REFLECTION』ツアーで、実に興味深い事実を知った。この曲を演奏する前に、桜井がこんな話をしてくれたのだ。なんでも彼は多数のペットを飼っていて、そのなかには金魚もいて、休日などは水槽の水を替えるのが役目だという。水道水の塩素は金魚に毒なので、前の日からそれ用の水を用意する。でも少しづつ、金魚が死んでいくのを目の当たりにするのだ。ペットショップに訊ねると、水というのは空気と循環させないと死んでしまうものであることを知る。この一言が、彼に閃きを与える。「これはいいことを聞いた。歌になる」。それが「HANABI」だったという。

ただ、この話に触れて一から曲を作り始めたのではなくて、実はその直前に、作りかけてはいたがお蔵入りになっていた作品があったのだ。それを当初よりマイナー調にしてみると、曲はみるみる完成していったという。しかもその時期、ジェームス・テイラーの歌をコピーしていたこともあり、まだ歌詞がなかったデモ・テープの段階で、彼は普段とはちょっと違う口の開き方でラララと歌っていて、それが新鮮な言葉を連れてきたことも功を奏したのだった。金魚の水の話と直接的に関係あるのかな、という箇所もある。“滞らないように 揺れて流れて”のあたりである。
HANABI

“捕まえることの出来ない”ものとは何か?

 水も空気と循環させないと死んでしまう、ということが、どのように歌のヒントとなったのだろう。優秀なソングライターである桜井は、“人の気持ちだって、同じだろう”と考えたに違いない。そうやって「HANABI」を聴き直してみるのもいいだろう。人の気持ちはすぐに変節する。永遠と想いつつ、突然、失われるものは多い。恋する心も、人の命でさえ、同じことがいえるだろう。

花火そのものを夏の風景として描くのではなく、それを花火の閃光に例える。心のなかの、決して“捕まえることの出来ない”“花火のような光”の在処を歌っている。花火を見上げたあと、目のなかに残る残像…。次の花火が打ち上げられても、同じように重なる光はない。それでもふと、そんなものを追い求めてしまう…。非常に印象的な“もう一回 もう一回”というフレーズ。これは前向きな気分のようでいて、躊躇いを含んでいる。そしてそれが、一直線の“青春歌”とはまた違う、この歌の深い味わいになっているのだ。
ミスチルの根強い人気!

歌ネットは2001年にサービスを開始し、様々な角度から歌詞の魅力を伝えてきた。歌詞が最も検索されるのは、CD発売のタイミングであるため、歌ネットの歴代ランキングを見ると、当然、2001年以降の楽曲が上位を占めている。しかし、歌詞検索サービスがスタートした2001年以前に発売された楽曲でも、発売タイミングを逸しているという圧倒的に不利な条件にも関わらず、普遍的な魅力を持つ楽曲は、現在も多く検索されている。2001年以前にリリースされた楽曲のなかで、プラチナリリックを最も多く記録したアーティストは、Mr.Childrenで、「終わりなき旅」「名もなき詩」「Tomorrow never knows」「シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜」「抱きしめたい」「innocent world」「口笛」のシングル7曲がプラチナリリックを獲得している。また、アーテイスト別年間ランキングをみても、2001年から2013年まで常にトップ5位以内にランクインしており、ミスチルの根強い人気を物語っている。
いつの世代の若者にも共感を呼ぶ桜井ワールド。歌ネットの人気コンテンツ歌詞のキモチ(ワタフレ)から集計!
高ければ高い壁の方が 登った時気持ちいいもんな  まだ限界だなんて認めちゃいないさ♪
曲名:「終わりなき旅」コメント総数:94
コメント:つらい事やきつい事から逃げようとする自分に勇気をくれる曲です!!もっと早く知っていたら、
     もっとがんばれたのに...って少し後悔してます。でもこれからがんばらなきゃ!(19歳/女性)
逢いたくなったときの分まで 寂しくなったときの分まで もう一回 もう一回 もう一回 もう一回
君を強く焼き付けたい♪
曲名:「HANABI」コメント総数:50
コメント:もうすぐ中学校を卒業します。スキな人と高校は別々だから全く会えなくなります。
     だからそうなる前に目に焼き付けておこう。いつでも思い出せるように。(15歳/女性)
あれからは一度も涙は流してないよ でも 本気で笑う事も少ない ♪
曲名:「くるみ」コメント総数:47
コメント:悲しくて、つらくて、たくさん泣いた。もう大丈夫って思ってたのに気づいたら素直に笑えなくなってた。
     そんな私のココロを歌ってくれてるような気がして、この曲を聴くたび、なんだか救われます。(16歳/女性)
共に生きれない日が来たって どうせ愛してしまうと思うんだ♪
曲名:「しるし」コメント総数:41
コメント:こんなに否定的に聞こえない「どうせ」は初めてです。 切ないのに、なぜか甘い。(18歳/女性)
愛はきっと奪うでも与えるでもなくて 気が付けばそこにある物 ♪
曲名:「名もなき詩」コメント総数:39
コメント:「奪う」のは傲慢。「与える」のは押し付けがましい。「気がつけばそこにある」って、素敵ですよね。(36歳/女性)
【ライブ情報】
◆Mr.Children STADIUM TOUR 2015 未完

2015年7月18日(土)福岡県 福岡 ヤフオク!ドーム
2015年7月19日(日)福岡県 福岡 ヤフオク!ドーム
2015年7月25日(土)大阪府 ヤンマースタジアム長居
2015年7月26日(日)大阪府 ヤンマースタジアム長居
2015年8月1日(土)広島県 エディオンスタジアム広島
2015年8月8日(土)新潟県 デンカビッグスワンスタジアム
2015年8月16日(日)東京都 東京ドーム
2015年8月17日(月)東京都 東京ドーム
2015年8月23日(日)北海道 札幌ドーム
2015年8月29日(土)愛知県 ナゴヤドーム
2015年8月30日(日)愛知県 ナゴヤドーム
2015年9月5日(土)神奈川県 日産スタジアム
2015年9月6日(日)神奈川県 日産スタジアム
2015年9月12日(土)宮城県 ひとめぼれスタジアム宮城
2015年9月19日(土)大阪府 京セラドーム大阪
2015年9月20日(日)大阪府 京セラドーム大阪

※お問い合わせ先 詳しくは
【リリース情報】
◆ニューアルバム「REFLECTION」

2年7ヶ月“Mr.Childrenの新しい音楽の可能性”を探求し続け、ついに完成したニューアルバム。今作は、全23曲収録の{Naked}と厳選した14曲収録の{Drip}の初回盤・通常盤の3形態で発売。月9『信長協奏曲』の主題歌「足音〜Be Strong」、『BMWアクティブツアラー』CMソング「fantasy」、『NEWS ZERO』テーマ曲「進化論」、映画『バケモノの子』の主題歌「Starting Over」など超大型タイアップ曲が満載であり、まさに最強盤と呼ぶにふさわしい作品に仕上がっている。
ニューアルバム「REFLECTION」
2015年6月4日発売

{Drip}初回限定版 TFCC-86543
¥3,213(tax out)
{Drip}通常盤 TFCC-86544
¥2,913(tax out)
{Naked}完全限定生産盤 TFCC-86555
¥9,000(tax out)