今の華原朋美だからこそ届けられる、応援歌…。

 今年20周年を迎える華原朋美が、約9年ぶりとなるオリジナル・シングル「はじまりのうたが聴こえる」をリリース!作曲は約16年ぶりに小室哲哉が手がけ、作詞は華原本人!実体験をありのままに綴る歌詞は、説得力に溢れ、ドン底から抜け出せずにいる人のココロをそっと照らしてくれる…。

 自分にしか経験できないツラい過去があったからこそ、今の自分がいると感謝できるようになったと言う彼女。“今”にたどりつくまでの過程と、これから先へ向けての意志を、新曲への想いと共に飾らない言葉で語ってくださいました!  
はじまりのうたが聴こえる 作詞:華原朋美 / 作曲:小室哲哉
ねぇ、はじまりのうたが聴こえる あなたがいなくても 歩けるよ
やさしい記憶が 今微笑んで 旅立つことを 教えてくれた
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INTERVIEW
「ある意味“強がり”であったりもする…」

まず、約9年ぶりのニューシングル「はじまりのうたが聴こえる」についてお伺いしたいと思います。ご自身で作詞をされていますが、どのような思いを込められたのですか?

華原:同じ苦しみを味わった人の言葉だからこそ伝わるものってきっとあると思うんです。この曲は、空想や妄想の世界ではなく、実体験を歌っています。かつての私と同じように、大きな悲しみを抱えていて、前に進みたいけどなかなかそこから抜け出せずにいる人に聴いてもらえたらという想いで書きました。ただ、私は今すごく元気ですが、振り返るという作業はとても大変で…。過去の痛みや幸せなどいろんな気持ちを思い出しながら作りましたね。

再び小室哲哉さんとの新たな楽曲を聴くことができて、嬉しいファンの方はたくさんいらっしゃると思いますが、小室さんに楽曲を依頼しようと思ったきっかけは何でしたか?

華原:デビュー曲も小室さんの楽曲でしたし、復帰してからもFNS歌謡祭だったり、いろんな場所で共演する機会がありました。そんな中、20周年ということもあり、自分の原点に戻る作業をしているときに、やっぱり小室さんの楽曲はすごく私らしさを引き出してくれるし、私らしく歌えると思ったのでお願いしました。今回また小室さん独特のサウンドを聴くことができてすごく嬉しかったです。

今回、久しぶりに作詞をされてみて何か変化を感じた面はありましたか?

華原:昔に比べて、かなり一言一言を自分の中で考えて書くようになりました。ものごとは簡単に伝わるものではないなと。歌手っていうのはいろんな影響を与える立場にあるので、歌の中で私の実体験を素顔のまましっかり伝えたかったんです。5分半という限られた世界の中で“今ココ”に辿りつくまでの過程と、ここからこうなっていくんだという意志を。

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歌詞の中に“遠く夜空 星に向けて この願いを放ちたいの”というフレーズがありますが、「この願い」を具体的に挙げるとしたらどんなものでしょうか。

華原:人それぞれ“願い”はあると思いますが、私にとっての願いは「今の状態を維持したい」ということかもしれません。壮絶な過去があって、それは決して楽しいものではありませんでした。でも今はその頃の経験にも感謝できるし、辛い過去があったからこそ今の私がいると思えます。だから、そう思えるこの場所にずっといたいけれど、苦しいことや悲しいことって生きていく中でまた必ずやってきますよね。その時に自分を見失わずにいたいんです。

なるほど…。

華原:よく考えると、好きな人ができて、その人と別れて、そこから立ち上がろうとするんだけど、うまくいかずに空回りして…って、きっと誰もが経験してることなんですよね。でも人それぞれ物事の受け止め方は違うので、それが人生の終わりだと思ってしまう人もいれば、自分の人生を強くするためのきっかけになったという人もいる。私自身はどちらかというと不器用な方なんだと思います。

ご自身で、とくに思い入れが強いフレーズを教えてください。

華原:すべてが濃いんですけど、「消えてしまいたい 何もいらない 暗闇の中 叫び続けた」という言葉はかつての私そのものなので、嘘がないフレーズだと思います。はじめは「消えてしまいたい」という言葉を「死んでしまいたい」と書いていたくらい素直に綴った部分なんですよね。「一人の朝も さびしい夜も くじけそうな時も 私は負けないよ」というフレーズはある意味“強がり”であったりもするかもしれません。

“強がり”ですか?

華原:本当に負けない人は、そういうセリフは言わないんだろうな…というか。あえてこういう言葉を口にする人ってだいたい負けることが多い人だったりするので(笑)。とくに私は、負けそうになることが多いんです。だから、負けないつもりで頑張っていきたいという想いが、曲のメロディーとも合わさっているんじゃないかなと思います。

「あなたがいなくても 歩けるよ」という言葉も印象的ですね。わりと男性は仕事と恋愛を別物として考えられますが、女性はひと繋がりのものだと捉えるイメージがあるので、そういう意味でこのフレーズは人間としての“自立”を表しているなぁと感じました。

華原:そうなんですよね。自立をしたいんです。でも普通、真顔で「あなたがいなくても歩いていけるから」なんて言うと、聞いた人は「えっ?」って引くじゃないですか(笑)。しかもそれを、小室さんの楽曲で、このメロディーで歌うというのは相当な不安のなか歌うことになるんじゃないかと思っている私もいます。でも“それでも前を向きたい”っていう言葉の意味合いでもあるんですよね。

自分の中の“理想”というか、それも「願い」の1つかもしれませんね。

華原:はい。「あの人がいなくても私は歩いていけるんじゃないか。そうだよ、自分に自信を持って!」って、自分で自分に語りかけるというか…。実際に今の私の状態も100%ではないし、そんな完璧なヒトはいないから。だからこそ私は私でこう頑張ろう!と思っています。でも逆に、インタビューで「私は完璧だから、あなたがいなくても歩いていけると思ってそれをそのまま書きました!」って言ったらそれもそれでヤバいですよね…(笑)。

「私自身も、華原さんのファンなので(笑)」

2012年に音楽活動を再スタートした時、華原さんにとっての“はじまりのうた”になった曲はありますか?

華原:JUJUさんの「やさしさで溢れるように」にはすごく励まされましたね。その時期ちょうど、旬な歌手の人たちがたくさんいて、どんどん入れ替わっていくなかで、自分も復帰はまだできていないけれど、そこに早く帰りたいという気持ちが強くなっていったのを覚えています。音楽番組を見て「みんなこんなに頑張っているのに、私はどうして頑張れないんだろう…」とか、いろんなことを考えましたよ。そんな時、この曲にずっと支えられていました。自分でも何度も何度も歌ってやさしい気持ちになりましたし、頑張ろう!と思いました。

作詞をするときにはどんなことを大切にしていますか?

華原:私には私しか経験できなかった過去があって、しかもそれは私だけの秘密にはなりませんでした。相手もいましたし、何があったかは皆さんにも発表されていることなので、それを「そういうことがあったね」と終わらせてしまうのではなく、そこからのストーリーを描きたいですね。だからこれからも、なるべく実体験に沿った詞の世界を伝えていきたいと思っています。

カップリングの「Dear Friend」もすごく華原さんの感謝の気持ちが伝わる曲ですよね。

華原:この曲は、JUJUさんの楽曲などを書いている高木洋一郎さんという方が書いてくださったので、世界も掴みやすかったのかもしれません。メロディーもすごく好きです。なにより今の自分があるのはファンの方々の応援や、家族の支えのおかげだということを歌で伝えていきたいという思いで書きましたね。

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この曲の歌詞に“歌う意味”というワードがありますが、華原さんにとってそれは何でしょうか?

華原:私にとっては…生きていくため、かな。楽しく生きるためにも、辛いことを乗り越えるためにも、すべてに対することが歌うことの意味です。

また、6月24日には2枚のベストアルバムがリリースされますね!まず「ALL TIME SINGLES BEST」は歴代のシングル楽曲が時系列に沿って並んでいるんですね。

華原:はい、曲順どおりに聴くと私の変化が徐々にわかります。歌声にもすごく波があるんですよね。だから録り直したいなぁと思う曲もありましたが、あえて当時のまま収録したので、聴いてみてちょっと胸が痛くなってしまいました。悲しいなって思う曲もたくさんあります。今の状態で歌えば、もっと上手く歌える自信はあるんですけども、デビューシングルから今の私までのありのままが全て描かれているので、それをわざわざ上手く録り直すのはあまり良いことではないかなと。だから、聴いている人が「あれ?」って思う曲もたくさんあるんじゃないですかね(笑)。でも、歌は思い出と共に記憶されるものなので、聴いてくれる人それぞれの思い出も次々と浮かんでいくようなアルバムになっているんじゃないかなぁと思います。

もう1作の「ALL TIME SELECTION BEST」は、ファンの方の投票で選曲されますが、結果をご覧になっていかがですか?

華原:私自身も、華原さんのファンなので(笑)、思っていることが通じ合えているなぁという曲の選び方をされていると感じました。この曲はもうちょっと良いところにいってほしいという隠れた名曲だったり、そういうものが選ばれているのは嬉しいですね。

「そういう人にはなれなかったからこそ…」

歌うときにはどんなことを意識していますか?

華原:毎回、心の中でテーマを決めています。例えば「I'm proud」だと、リリース当時は恋や愛をテーマに歌っていました。でも最近歌う「I'm proud」は人生の歌として変わってきていますし、今の私を助けてくれるような応援の歌にもなっています。だから日常の中で辛いことがある状況でこの曲を歌うときには自分で歌って自分で励まされるような、不思議な感覚がありますね。あとは、聴いてくれる人をなるべくその楽曲の世界へ連れていけるように歌う努力はしているつもりです。

最近、テレビ音楽番組でお見かけする機会も増えましたが、そういう場面とレコーディングとではまた歌うときの気持ちも変わりますか?

華原:変わりますねぇ。音楽番組のときはすごく緊張しますし、素直に歌うのがなかなか難しいんです。レコーディングに関しては、疲れ切った状態で歌うというか、ひと波越えないと私の歌って出来上がらないんですよね。ただ、何度も歌うと声にも負担がかかるし、CDになるものなのであまりカスカスでも良くないんですけど。上手く歌おうと勢いよく歌ってCDになってしまうと、ライブなどでそのとおりに歌えなくなってしまうので。疲れて歌うくらいが私にはちょうどいいんです。

華原さんは今年20周年を迎えられますが、続けてきたからこそ見えてきたものはありますか?

華原:素直に話したり、歌で表現したりするのは恥ずかしくないんだということですね。やっぱり人は嫌なことがあればそれを隠そうとするのが普通だと思います。でも私は、そういう風には生きてこなかったし、そういう人にはなれなかったから…。だからこそ今までの経験をきちんと話せるような人になりたいし、それを歌に乗せたいと思えるようになりました。

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ご自身の変化した面と変わらない面を挙げるとしたらなんでしょうか。

華原:変わったところは…すごく一つ一つの作業が細かくなりましたね。一つの曲を作りますというときに、そのものに対する愛情や情熱は、去年とも一昨年とも違うし、どんどん強くなっている感じはします。20代のときより、30代のときより“作品にする”という意識が今一番強いです。変わらない面は…ラーメンが好きとか(笑)? 頑張ったあとにはいつもラーメンを食べるんです。

華原さんの「座右の銘」になっているような言葉はありますか?

華原:とくに今は「人との出会いを大切にすること」ですね。その人と“出会う”ことって、それまで誰にも予想できなかったことじゃないですか。それが運命だし、奇跡だと思うので。昔は人の名前も全然覚えられなかったし、いつまでたっても(この人誰だっけ…?)と思っていました(笑)。

これからの夢や目標を教えてください。

華原:いろんなことにチャレンジしたいと思います。トレーニングの面でも、ボイトレにしっかり通いたい。私は低いキーを歌うのが苦手なんです。小室さんの曲は基本的にキーが高くて、そういう昔の曲を歌い続けると、低い音域が出にくくなるんですよね。そこは先生と相談して訓練しなおしたいですね。

7月からは全国ツアーも始まりますが、どんなライブになりそうですか?

華原:“可愛い”という感覚って女の子の誰もがずっと持っているものだと思うんです。それは80代になっても変わらない気がしていて。私は今年41歳になりますが、今まで“可愛い”ということをステージ上で表現した経験がなかったので今回はやってみたいなぁと。でもそれだけだとお腹一杯になっちゃうと思うので(笑)、メリハリをつけようと考えています。昔の全盛期の時はスーツで歌うというスタイルだったので、それはそれで世界観を守りつつ…。小室さんの歌もたくさん歌うので、アップテンポな明るい歌では“可愛い”の世界を伝えていきたいですね。とにかくツアーでみんなと楽しい時間を過ごせるようにしたいです。

最後に、歌ネットを見ている方にメッセージをお願いします。

華原:インタビューを見てくださってありがとうございます。5月20日に「はじまりのうたが聴こえる」というシングルをリリースします。すべてが実体験に基づいていて、今の状況からこれから先の夢なども歌っているので共感してもらえると嬉しいです、是非、聴いてください!