岸を離れる日

その日も川は流れてた
いつもと変わらぬ姿で
なぜだか わけも知らず家を出て
わたしはひとり歩き出した

赤い靴をはいていた
初めてはいた 赤い靴
夢から生まれ出た赤い火が
とまどう足を せきたてる

わたしをどこへ誘う
明け方の道

夜明けの風の岸に立ち
透明な炎のように
心は燃えていた あなたへと
やみくもにただ あなたへと

わたし 無造作に靴を脱いで
投げた瞬間も 上の空で
あなたに ただあなたに会いたくて
あなたに ただ届きたくて

でもわたしを乗せた舟は
わたしだけ乗せてすべり出した
これから始まる旅の孤独を
孤独とさえ まだわからずに

わたしをどこへ運ぶ
運命の川
体は空に溶けて
虚空をいだく

岸を離れ 走る舟の
風がわたしの髪を乱し
心は燃えていた あなたへと
やみくもにただ あなたへと
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