廃墟の記憶

記憶と呼ぶには妙にぼやけた声が
表通りを抜けて彼の耳に届いた

遠い昔に忘れ去られたことが
立ち現れるだろう
そして立ち去るのだろう

子供たちが解き忘れた自由や
君とよく似た顔や
プラスチックの自動車
大人たちが手放した理由や
ゴミ溜めに咲く花を蹴散らして歩く衛兵

照準を背中に合わすマシンガン
手を休めればたちまち蜂の巣さ
書類の改竄に勤しむ自警団
世界の終わりが酒場で待ってるぜ

愛と呼ぶには少し足りない言葉
読み返した部屋に音の速度で響いた

近い未来に忘れ去られることが
立ち現れるだろう
そして立ち去るのだろう

若者たちが掴み損ねた理想や
君の名前の墓標や
足の途絶えた参列者
恋人たちが語り忘れた希望や
手向けられた祈りを蹴散らして歩く亡霊たち

照準を背中に合わすマシンガン
手を休めればたちまち蜂の巣さ
書類の改竄に勤しむ自警団
世界の終わりが酒場で待ってるぜ
そうだろう?

君は残って
ここに残って後を担うのか
それとも足を引きずりながら
先を急ぐのか
長いばかりで中身のない話をしながら
最果ての街で裸になって生きて行くのか

記憶と呼ぶには妙にぼやけた声が
表通りを抜けて彼の耳に届いた

遠い昔に忘れ去られたことが
立ち現れるだろう
そして立ち去って行くのだろう
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