虚 蜩

もう 帰れない
幾つ陽が落ちて
暁に目を焼かれても
契りさえ無いもの

願い募らせれば痛い
忘れさせて 如何か
そんな夜をまだ手繰るの?

悲しみを抱き 夢現つ
ひらりと散った
生きる理由も
拾えないこの目は
まだ あなたの面影で

従う傷に「いつか」を見ても
笑えない
追懐に痩せていく
逃げ場の無い心は
ただ白く

言葉も無く流れ出す
落涙の所為
さよなら あなた
走馬灯の底で
思い出す度に 消えたい

一人 茅蜩が鳴き止む頃に
そう 茜色の空見つめ
籠の中 届かぬ愛と

悲しみを抱き 消えていく
堪えた日々も
僅かに響く
痛みと廻り出す遠き声が

泣かないで もう 終わった事
砂上に落ちた虚蜩がとても悲しかった
ただ 私の様で
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