幽霊

在りし日の幻影を ハンガーにぶら下げて
多情な少年は 出がけに人影を見る
去り行くものに外套を着せて 見送る先は風ばかり
かじかむ指先でドアを開けて 未練を置きざりにして街に出る

繁華街で馴染みの顔と 音のしない笑い声 喧噪が静寂
楽しいと喜びが反比例しだして 意識の四隅に沈殿する
小さな後悔ばかりを うんざりする程看取り続けて
一人の部屋に帰る頃 どうでもいい落日が
こんな情緒をかき混ぜるから 見えざるものが見えてくる

幽霊 夕暮れ 留守電 がらんどうの部屋
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