限りなく透明な

海には誰もいません 空はどんより曇っています
誰かが名前を呼んだ気がして 振り向きましたが誰もいません
小さな薄い貝殻が 指先で音を立てました
あんまり薄いものだから もろく割れてしまったのです

こんな所に一人だから ひどくちっぽけに思えて
生き物のようなさざ波が 音も何も食べてしまった

君は僕の爪を桜貝みたいだと言った

西にはかもめが飛んでいます 風を上手にとらえています
天使の梯子が降りてきて あんまり綺麗で泣きました

とっても眩しい青だから 君にもきっと見せたくて
試しに両手ですくってみたら 色も何も無くなりました

君は僕の爪を桜貝みたいだと言った

どうしても君に贈りたくて 夢中になって探していた
振り向きもせず歩いていたから 気づいた時にはもう

ずいぶん離れてしまったよね

君は僕の爪を桜貝みたいだと言った
やっと見つけた 限りなく透明な
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